「自分で見ても面白い試合」寺地拳四朗がオラスクアガ戦を自己解説!「スーパー・フライ級まではいけると思う」との野望も告白
寺地とオラスクアガの一戦は掛け値なしに最高の試合だった 写真提供:WOWOW
WBA、WBC世界ライト・フライ級王者の寺地拳四朗(31=BMB)が、今年4月に有明アリーナで行われたアンソニー・オラスクアガ(24=アメリカ)との2団体王座防衛戦を振り返った。
世界タイトルマッチが13試合目を迎える寺地に対し、オラスクアガはプロ6戦目というキャリアで、世界戦は今回が初めて。しかも当初の挑戦者が試合2週間前に病気でキャンセルしたことによるピンチヒッターで、寺地有利が伝えられるのは当然だった。
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ところが新鋭のオラスクアガは“噛ませ犬”ではなかった。豊富なキャリアを誇る王者相手に臆することなく、その才能を十二分に発揮したのだ。試合はスタートからアクション満載。寺地が持ち前のアップテンポな攻撃を繰り出せば、オラスクアガもスピード感あふれるコンビネーションで対抗する。
初回の攻防を「怖いっすね。倒しにきているなあという感じ」と振り返った寺地だが、オラスクアガが並の選手でないことはだれよりも知っていた。以前、スパーリングをしたことがあり、「日本人選手とはレベルが違うパンチ力を持っていた。頭にたんこぶができたくらい。自信はあったけど、一発でどうなるか分からないと思った」と、試合前から挑戦者の実力を高く評価していたのである。
激しい攻防を繰り広げながらも、寺地はしっかりポイントを取って序盤戦を制した。3回には右を決めてダウンも奪った。4回を終えて、「ちょっと相手が落ちてきたかなと。多少パンチをもらっても大丈夫かなと思った」と余裕も出たが、本当の戦いがここから始まろうとは本人も予想していなかった……。
寺地はオラスクアガの失速を期待したが、チャレンジャーは何度も息を吹き返してチャンピオンに迫る。その戦いぶりを寺地は「戦い方がうまい。うまく休む」と分析した。落ちると思った相手がなかなかペースダウンしないのだ。
5、6回と試合が進み、寺地は「ボディは効いていると思ったけど、僕がメンタル的に削られていった。集中力も切れかかってきた」と当時の状況を告白。8回はあえてペースを緩めると、これが災いしてオラスクアガの猛攻を許してしまった。
9回、トレーナーから「めちゃめちゃカツを入れられた」という寺地は自らを奮い立たせた。激しくオラスクアガを攻め立て、金星をつかみかけた挑戦者をついに連打で沈める。「僕の心が先に折れていてもおかしくなかった」。激闘をものにした寺地はリング上で周囲を憚らずに涙。客席から「年間最高試合候補だ!」との声が上がった。