「井上選手の終盤KO勝ち」 両者と拳を交えた元世界王者 河野公平さんの証言と予想
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バンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(27=大橋)が日本時間の11月1日、アメリカのネバダ州ラスベガスでWBA2位、IBF4位、WBO1位にランクされるジェイソン・マロニー(29=オーストラリア)の挑戦を受ける。この試合に際し、ひと一倍感慨深い思いを抱いている人がいる。両選手と対戦した経験を持つ元WBA世界スーパー・フライ級チャンピオンの河野公平さん(39)だ。井上が圧倒的有利とみられている試合だが、河野さんも同感だという。「マロニーはスキのない選手ですが、井上選手はすべてが図抜けている」と話す。
階級を上げてさらに強くなった井上
――河野さんは10度の世界戦を含めプロ18年で46戦(33勝14KO12敗1分)しましたが、KO(TKO)負けは井上戦とマロニー戦だけなんですね。
河野 パンチをもらうこともありましたが、急所を外して耐えていたので(笑)。
――2016年12月の井上戦を振り返ってみてください。
河野 試合前、井上選手とスパーリングをした後輩から「パンチが掠っただけで足が痺れた」と聞いていたんですが、やるからにはもう一度世界タイトルを取ると意気込んでいました。打ちに行ったところにカウンターを合わされても仕方ないとは思っていましたが、実際、それまでもらったことのない左フックを合わされました。(映像は)何度も見直しましたが、気持ちいいぐらいの完敗です。
――戦ってみて、井上選手は何が優れていると感じましたか。
河野 すべてです。スピード、パワー、技術……すべてがすごい。
パンチのパワーに関しては左ジャブが他の人の右と同じぐらい強かったし、右は他の人の3倍ぐらい強かった。いまはもっと強いでしょうね。それに、こっちが打ちに行っても、そのときには彼はそこにいないし。僕は相手が打ってきたら打ち返すという戦いが多かったんですが、井上選手は打ち返そうとしたときには(パンチが当たる位置に)いませんでした。ポジションの取り方も巧いですね。僕は世界戦を10回やりましたが、あんな選手はいませんでした。ラウンドの後半には連打してきたし、気持ちも強いですね。あとボディ打ちも巧いしフィジカルも強い。軸がしっかりしているから体がぶれないんでしょうね。とにかくすべてが図抜けています。
――その試合から4年。井上選手はさらに強くなったと思いますか。
河野 僕と戦ったときはスーパー・フライ級でしたが、それから階級を上げてパワー、スピードなどさらにすごくなったと感じます。僕と戦ったときとは比べものにならないぐらい強くなっているんじゃないですか。
――昨年11月のノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)戦では9回にパンチを浴びてピンチもありました。
河野 あれはビックリしましたね。でも、技術力は上がっていると思います。
――あえて、いまの井上選手の課題を探すとすると?
河野 少しガードが下がるところはあるけれど、課題というほどではないでしょうね。