中村紀洋 監督・コーチに求められる部員への接し方

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子供は「できなくて当たり前」。上達するスピードに個人差があることを指導者は頭に入れなければいけない


 中村紀洋です。連載企画4回目の今回は「体罰」について綴らせて頂きます。

 部活や運動に打ち込んでいた子供が肉体的、精神的苦痛を感じて自殺に追い込まれたニュースを見ると胸が痛みます。なぜ体罰はなくならないのでしょうか。私は指導者の意識だと思います。野球を教える指導者が、「なぜできないんだ!」と小さな子供に怒鳴る光景をよく見聞きします。「こんな簡単なこともできないのか」という思いからイライラする感情を制御できないのでしょう。ただこれは根本的におかしな考え方なのです。子供は「できなくて当たり前」なのです。できないから一生懸命に練習する。教えられたことを簡単にできる子供もいれば、時間のかかる子供もいる。上達するスピードに個人差があることを指導者は頭に入れなければいけません。

 私の学生時代は体罰が当たり前でした。殴られたことは数えきれません。その時は殴られることに特に疑問を抱くこともありませんでした。「そういう時代だったのかな」と思う部分もあります。ただそれが正しいとは思いません。私は「N’s method」(エヌズメソッド)、浜松開誠館の非常勤コーチで指導に当たっています。「挨拶をしっかりしなさい」と礼儀作法で注意することはあっても、トレーニングや野球の技術を伝えた時に、「なぜできないんだ」と怒鳴ることはありませんし、手を上げることも当然ありません。子供が委縮しますし、うまくなる可能性の芽を摘むことになるからです。

 浜松開誠館の部員たちにはしんどい練習の時も、私は「笑って!笑って!」とゲキを飛ばします。辛い時もあります。でも好きで始めたスポーツを楽しむ気持ちを忘れないでほしい。教えられたことをできた時に子供は心の底から喜んだ表情を浮かべます。誰よりもうまくなりたいのは子供たちなのです。その取り組みを支える私たち大人には大きな責任があると思います。


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※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

中村 紀洋(なかむら・のりひろ)

渋谷高で2年夏の90年に「4番・投手」で激戦区の大阪府予選を勝ち抜き、同校初の甲子園出場に導く。高校通算35本塁打。91年にドラフト4位で近鉄バファローズに入団し、「いてまえ打線」の4番として活躍した。00年に39本塁打、110打点で本塁打王、打点王を獲得。01年も132打点で2年連続打点王に輝き、チームを12年ぶりのリーグ優勝に導く。04年に日本代表でシドニー五輪に出場して銅メダルを獲得。メジャーリーグ挑戦を経て06年に日本球界復帰し、07年に中日で日本シリーズMVPを受賞した。13年にDeNAで通算2000安打を達成。15年に一般社団法人「N’s method」を設立し、独自のMethodで子ども達への野球指導、他種目アスリートを中心にトレーニング指導を行なっている。17年には静岡・浜松開誠館高校で硬式野球部の非常勤コーチに就任。高校生の指導に力を注ぐ。

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