中村紀洋連載 指導者が選手の欠点を直そうとして長所も失うケースが多い
今回は打撃指導についてお話しさせて頂きます。小・中学生の子供たちを教えるアマチュア球界の指導者に多く見受けられるのですが、欠点の修正ばかり注意しているケースが気になります。これは非常に危険だと思います。例えば打撃である選手のタイミングの取り方に、「無駄が多い」と注意します。その選手は間を取るために必要な動作なのに修正を迫られることで、打撃がおかしくなってしまいます。僕自身の考え方としては欠点は欠点のままでいいですし、果たして、本当に欠点と決めつけていいのか疑問に思います。選手の打撃フォームは十人十色でそれそれ個性があります。指導者が型にはめて教えることは、その個性を殺してしまうことになるのです。修正したいところはあるけど、球を遠くへ飛ばす技術は凄い。欠点の修正はいつでもできます。それより長所を磨くことに指導者は重点を置いた方がよいと思います。
これはアマチュアの世界に限った話ではありません。プロの世界でも凄い潜在能力を持った選手がコーチに打撃フォームを矯正されて自分を見失い、1軍で活躍することなく消えていった例は少なくありません。足の上げ方一つとっても高々と上げる選手、すり足、ノンステップ打法と様々ですし、どれが正解というのはありません。自分に合う形を見つければよいですし、それは指導者に強制されるものではないと思います。特にプロの世界は結果が全てです。結果を出せるか出せないか、野球人生は自己責任の厳しい世界です。プロに入る選手はみな能力は高いです。自分の長所を見つめ直し、ひたすら練習することが重要だと思います。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]
中村 紀洋(なかむら・のりひろ)
渋谷高で2年夏の90年に「4番・投手」で激戦区の大阪府予選を勝ち抜き、同校初の甲子園出場に導く。高校通算35本塁打。91年にドラフト4位で近鉄バファローズに入団し、「いてまえ打線」の4番として活躍した。00年に39本塁打、110打点で本塁打王、打点王を獲得。01年も132打点で2年連続打点王に輝き、チームを12年ぶりのリーグ優勝に導く。04年に日本代表でシドニー五輪に出場して銅メダルを獲得。メジャーリーグ挑戦を経て06年に日本球界復帰し、07年に中日で日本シリーズMVPを受賞した。13年にDeNAで通算2000安打を達成。15年に一般社団法人「N’s method」を設立し、独自のMethodで子ども達への野球指導、他種目アスリートを中心にトレーニング指導を行なっている。17年には静岡・浜松開誠館高校で硬式野球部の非常勤コーチに就任。高校生の指導に力を注ぐ。