プロ野球界の「ルパン」たち
「ルパン」といえば、何を思い浮かべるだろう。あの手この手で金品を盗むまでにコメディーあり、ドキドキあり、サスペンスありの人気アニメ「ルパン三世」は定番。ムッチムチ悩殺スーツを着た女優・深田恭子が悪を成敗する泥棒を演じるドラマがフジテレビ系で放送されている「ルパンの娘」。いずれも正義ではないが、見終わった後には、なんともいえない爽快感も残る。
プロ野球界にも「ルパン」が存在し、『盗みを働く人』の隠語として使われる。手の人さし指を第2関節から折り曲げ、カギの形を作る『盗み』ポーズと一緒に、「昨日ロッカールームでルパンが出たんだって」と若手選手たちがひそひそ話をする、といった光景が実はそれほど珍しくない。
盗難があっても、ほとんどの場合は表沙汰にならない。なぜならチーム内の犯行である確率が高いためだ。球団内で調査して、たとえ特定できても、よっぽどでなければ被害届は出さない。盗んだ選手についてはオフを待って契約を解除するか、能力があればトレードに出す選択肢もある。わざわざ球団内部の恥部をさらす必要はない。
話題になったのは西武ライオンズの平尾博嗣コーチ(44)。関係者によると、20年10月に後輩選手から盗んだ靴を、堂々と履いて球場に来ていたという。ルパン三世並みの大胆さだが、球団にバレて本人も窃盗を認め、シーズン途中で解雇された。球団はコンプライアンスに厳しいため、公表に踏み切ったが、警察沙汰にはしなかった。