「ノムさんの右腕」が語る「野村ノート」、「ID野球」誕生秘話
状況ごとのシミュレーションの大切さ
野村監督からはまだまだ驚かされることが沢山ありました。
その一つがカウントについてです。ある時、監督に「松井、お前、ボールカウントは何種類あるか分かるか?」こう聞かれました。実際には12種類あります。
当時、これを答えられる選手はいませんでした。そしてその12種類を3等分するんですね。バッテリーが有利なカウント、互角なカウント、バッテリーが不利なカウント。そこで野村監督はこう言うんです。
「お前、バッターだったら、不利なカウントならどう考えるか。有利なカウントならどう考えるか。」
野球経験者だったらわかるかもしれませんが、バッターは追い込まれたら三振したくないという神経が働きますよね。その時に、3分割したカウントを当てはめて、三振したくないなら真っすぐに弱い、ストレートに振り遅れる。そういったことを監督は逐一書き込んでいましたね。これはすごい能力だと思います。
阪神時代の失敗
ヤクルトで指導者を務めた後は野村監督と共に阪神へいきました。そこで、ある失敗を犯しました。
それは何かというと、「野村の考え」という監督の考えをまとめたものを冊子にして配った事です。
そこに何があったかというと、監督からの言葉を写さないといけないという意識が無くなってしまったんですよね。あらかじめ書かれたものをもらってしまうと、その文章に対する意識が低くなってしまう。
野村監督は常にそこを失敗したな、ヤクルト時代のように書かせればよかったなと言っていて、今でもなお言っています。