鮮やかに蘇った大魔王 “パリ五輪の呪縛”から解き放たれた伊藤美誠が取り戻した「笑顔」
こうした状況のためか、選考レースで伊藤は5位スタートと出遅れた。後半は徐々に追い上げたものの最終的に平野美宇との出場権争いで敗れた。レース終盤の伊藤は、傍目にも心身ともにボロボロの状態に見えた。
敗戦後の上記発言も相まって、ここから蘇ると予想できた人はいなかったのではないか。その翌月のインタビューでは「今まで日本選手が成し遂げていない世界ランキング1位を目指す」と笑顔で新たな目標を口にしたが、正直なところそのときも、空元気か強がりに見えた。
しかし伊藤は本当に蘇った。しかも、過去7連敗中で、徹底的に伊藤対策をしてきたはずの王を破るほどに強くなって。それはかつて中国のメディアから大魔王と形容されたそのものの強さだった。
伊藤は試合中にときおり笑顔を見せ、試合をするのが楽しくて仕方がない様子が伝わってきた。パリ五輪の呪縛から解き放たれた伊藤は恐ろしく強かった。
[文:伊藤条太(卓球コラムニスト)]
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