日本が“ブラジル病”の呪縛を破った夜 「2分け11敗」の壁を越えて辿り着いた“恐れなき自信”

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後半に投入された伊東の働きは別格だった(C)Getty Images

 また、この何でも無い普通のやり取りが妙に気になったのは、当の日本代表も、序盤はブラジル病にかかりながら試合に入ったと感じたからだ。引いてブロックを作ることは戦術的な意図を含むとしても、序盤のデュエルで先手を取られたせいか、保持したボールを余裕なくリリースして失うなど、まるで爆弾を持っているかのように焦ってプレーする様子が目についた。もう一歩深く切り込めば、そこで逆へターンすれば、そこで縦ズレしてプレスに行けば、開ける未来もあるのに。

 ブラジル代表だって人間だから、焦ったらミスをするし、一つのミスでチームが崩壊して3失点することもある。後半は一転して日本がプレッシャーをかけ、ほとんどの局面で優位に立った。その中で最も目立ったのは鈴木淳之介だが、渡辺剛も素晴らしかったし、鈴木彩艶と伊東純也は圧巻だった。

 この初勝利で、日本はブラジルに免疫ができた。ブラジルだって人間だから―。すごく当たり前なことだが、少なくともこの20年間は全く気づくことのなかった事実に、今夜たどり着いている。どんな強豪も人間の集まりだ。必ず脆さを内包するし、日本のプレッシングはそれを露わにする破壊力がある。それをドイツ、スペイン、ブラジルと少なくとも3度は示してきた。

 そして、この人間ならではの脆さを、さらにあぶり出すプレッシャーは、後半の逆境に促されなくても、前半から仕掛けられるはず。たとえば、引いて構える中で時に縦ズレしてプレッシャーを浴びせ、焦りを誘発したり。

 森保監督も本当はそうやってプレーさせたかったそうだが、前半はうまく機能せず、今回も2点差の逆転という状況に促され、アグレッシブさを発揮した。カタールW杯と同じように。

 次に強豪と戦うときは、その破壊力を出すタイミングの調整によって、違う勝ち方ができるのではないか。それは次のステップ。即ち、森保監督が目指す「先行勝ち切り」だ。強豪に対しても。当然、言うほど簡単ではないが、それができれば、いよいよ……いよいよだ。

[文:清水英斗]

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