佐野海舟が生んだ“混沌からの先制点” ガーナ戦で際立った「異物感」と進化の余地
佐野のボールを奪い切るスキルは一段抜けている(C)Getty Images
11月14日に行われた国際親善試合で、日本代表はガーナ代表に2-0で勝利を収めた。先月のブラジル戦の前半に課題となった、相手をリスペクトする余り引きすぎた守備――。これを立て直し、今回は敵陣からアグレッシブにハイプレスを嵌めた。ブラジルに対する歴史的な勝利で歓喜に沸いた直後の試合だが、日本は浮かれも油断もせず粛々と課題を修正し、クリーンシートで勝利した。この意味は大きい。W杯まで7か月、良い流れに乗っている。
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ガーナ戦で最も大きなインパクトを残したのは、佐野海舟だろう。持ち味である1対1の強さと推進力は目を見張るものがあり、16分にはボール奪取とパワフルな前進、シャープなラストパスで南野拓実のゴールをアシストした。身体能力に長けたガーナが相手でも、佐野のボールを奪い切るスキルは一段抜けている。
スポーツではこうした超人的な動きをする選手を指し、「積んでいるエンジンが違う」と表現することは多いが、佐野の場合はエンジンだけでなく、足回りが異質だ。腰を低く落とした姿勢は当たりに強く、まるで四股を踏む力士のように、かつ方向転換を伴いながら鋭く相手の懐へ入って力強くボールを奪う。この姿勢で相手のターンについていく二の足、三の足を次々と出すのは、下半身の筋肉に負担が大きそうだが、佐野はこれが通常運転だ。ガーナは個人で解決しようとボールが留まる傾向があったので、それを佐野の唯一無二の粘り腰が絡め取った。
ただ、この異質感。今は良くも悪くも、という感が無きにしも非ずだ。対人守備のポジティブな異質感に対し、ポゼッションはネガティブな異質感がある。
たとえば2分、田中碧から佐野への何でもない横パスがずれ、失敗した。過去の試合でも何度か感じたが、佐野は味方がパスを出そうとするタイミングで急に大きく動きすぎて、パスがずれるケースがしばしば目に付く。
21分には自陣深い位置で、佐野が無理にワンタッチでつなごうとし、ミスになってカウンターを受けた。29分の場面は自陣でボールを回収した堂安律がドリブルで運び、相手の選手間に横パスを通してサイド展開を図ったが、そのコースに誰が顔を出すのか定まらないまま、ボールは南野と佐野、中村敬斗の間へ抜けてしまった。結果、ガーナにインターセプトされ、カウンターを食らっている。62分も似た場面で、田中からの横パスが佐野と久保建英の間を通り抜けそうになった。ここは久保が下がってボールを受け取り、キープし直してミスにはならなかったが、自陣のビルドアップは不安定だった。
この試合はそもそもポゼッション時のイージーミスが多かったが、久保らが縦をねらって失敗した類の場面とは異なり、何でも無い自陣での横パスについてミスが多かったのは気がかりだ。横パスは成功して当たり前と見られるだけに、それを失敗すると多くの味方が置き去りにされ、危険なカウンターを食らいがち。そこに佐野が絡むケースが多かった。





