プランが崩れ、ほぼぶっつけ本番で挑んだ異例の日韓戦 井上尚弥が“楽勝ムード”もあった一戦で見せつけた強者の駆け引き
「有構無構」という言葉がある。これは日本の偉人である宮本武蔵がしたためた兵法書「五輪書」の中に出てくるもので、戦いにおいて基本的な型はあれど、相手の構えや特長、そして性能を瞬時に読み取った中で、臨機応変に戦術や型を変化させて挑むべきという心得の一つである。
今回の日韓戦における井上は、この大剣豪が世に説いた強者の在り方を見せつけたように思う。
無論、キム・イェジュン側も試合決定から準備期間はほとんどなかったとはいえ、リザーバーとして井上と戦う可能性を彼らは知っていた。その分、幾分の精神的な余裕はあったはずである。一方で井上は1か月の延期からの対戦相手の急な変更と、「楽勝ムード」を漂った世間が思うほど楽なシチュエーションではなかった。
加えて井上は昨年11月にサウジアラビア政府が掲げる国家プロジェクトである『Riyadh Season』と推定30億円とされる巨額契約を締結。いよいよ本格的に世界進出を睨む中で、負けられない重圧は増していた。
それでも完勝、いや圧勝した。その結果は「もちろん1ラウンド目から全力でと考えているが、攻撃全面でいくのか、ボクシングIQを立てて全力で行くのかで変わってくる。自分は(見極める)作業をしていきたい」と語っていた井上の駆け引きが、戦前に「(井上が)普通のボクサーのように見えた」と語った挑戦者を飲み込んだからだと言えるのではないだろうか。
次戦は、春に約3年11か月ぶりとなる「ラスベガス決戦」に臨む路線が確実とされている。相手は、32戦無敗のWBC世界同級1位アラン・ピカソ(メキシコ)が内定。身長173センチ、リーチ178センチの長身ファイターはボクシングIQも高く、一筋縄ではいかぬ相手ではある。
それでも井上が敗れるという光景は現時点では想像し難い。最盛期を謳歌する怪物が、24歳の挑戦者をどう受け止め、いかに破るのか。猛者の境地に達した感もある絶対王者の一挙手一投足に興味は尽きない。
[文/構成:羽澄凜太郎=ココカラネクスト編集部]
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