耐え抜こうとしたタパレスも最後は破壊…井上尚弥に弱点はあるのか “敗者”の証言が示す尋常じゃない強さ
頑丈な壁をこじ開けるように、ガードの上から強烈なワンツーを見舞う。最後はスッと伸びた右拳が顔面を貫いた。ガクッと崩れ落ちたタパレスの姿は、受けた拳の破壊力をまざまざと物語った。
今年7月に井上に8回TKO負けを喫したスティーブン・フルトン(米国)が「試合中のボディーへのジャブが見えなかった。パワーというより(パンチの)タイミングだったと思う」(試合後の会見談)と評したように、タパレスもまた「とにかくスピードが速くてついていけなかった。タイミングを合わせることができなかった」と語った。
井上には異次元のパワーが備わっている。それは26戦23KOの実績も示している。しかし、そのパワーをより効果的に発揮させているのは、あらゆる引き出しを持つ技術力と、タパレスも語ったスピードに他ならない。
20年にラスベガスでタイトルマッチを行ったジェイソン・モロニーも「イノウエが勝つには、1秒だけ完璧であればいい。あいつは、ただただ尋常じゃない。信じられないほど素早いんだ」と漏らしている。つまり、どれだけ守ろうとも、ほんの数秒あれば、仕留められる。そんな印象を井上は、ライバルたちに強烈に植え付けているわけだ。
ひとたび守勢に回れば、変幻自在な駆け引きでこじ開ける。ならばと、攻勢に転じれば一撃で仕留められてしまう。あの手この手を尽くしても倒せない井上に弱点などあるのか。少なくとも、10ラウンドを戦ったとは思えない綺麗な顔で「自分にとってはまだまだ通過点」と言い残した怪物に隙は見いだせなかった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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