井上尚弥戦のKOショックは影響したか? 名手フルトンの“再起戦”を見た米記者が説くフェザー級での生きる道【現地発】
この先にフルトンが戦うべき相手は誰か?
カストロ戦でのフルトンは5ラウンド、8ラウンドと2度にわたって右パンチを浴び、深刻なダメージを受け、少々打たれ脆くなっているようにも見えました。
前戦で井上に強烈なノックアウトをされた影響があったのかは現状ではわかりません。実際、フルトンのパンチ自体はシャープだったように見えましたし、ダメージよりも昇級後の階級で抗戦的に戦い続けたことが響いたと見るのが妥当かもしれません。126パウンドがリミットのフェザー級という新しい環境で、自身よりパンチ力のある選手と相手の得意とする距離でパンチを交わせば、効かされてしまったとしても不思議ではありません。
さらに付け加えると、長期間のブランクは様々な形で災いをもたらすものです。それはタフネスにも関係があるというのが私の見方でもあります。同じく14日の興行のアンダーカードで行われたWBA世界スーパーミドル級暫定王座決定戦では、昨年3月以来の実戦となった元IBF世界スーパーミドル級王者ケイレブ・プラント(アメリカ)が序盤に、無名のトレバー・マカンビー(アメリカ)のパワーに手を焼いていたように見えました。
ところが、ラウンドが進むにつれ、プラントは相手のパンチに慣れ、マカンビーに効かされなくなっていきました。同じようにフルトンもフェザー級でもっと定期的にキャリアを積めば、タフネスも安定するかもしれません。
いずれにしても、この階級ではもうカストロ戦のように中間距離での戦いに長時間を割くべきではないのでしょう。体格的にスーパーバンタム級時代のアドバンテージはなく、今後もパワー負けすることは考えられます。フェザー級で戦い続ける限り、世界レベルのほぼすべての試合でフルトンはパワー面でハンデを負うことになります。
もちろん、フルトンはフェザー級でもマッチアップ次第で一定の成功を収められるとは思います。ただ、長身で、中間距離の戦いを得意とするWBO王者ラファエル・エスピノサ(メキシコ)との対戦は避け、スーパーバンタム級時代に一度は下した経験のあるIBF王者アンジェロ・レオ(アメリカ)、WBC暫定王者フィゲロアらとのリマッチに向かう方が得策かもしれません。
フェザー級でのフィゲロアはフルトンよりかなり大きいかもしれませんが、それでもこの再戦は勝算のあるカードだとは思います。これから先、サイズ、パワー面のディスアドバンテージを克服し、フルトンがフェザー級という戦場でどんな戦果を収めるかを私も注目していきたいと思っています。
[翻訳・構成:杉浦大介]
[取材協力:ショーン・ジッテル(FightHype.com)]
【関連記事】フルトン、辛勝も前途多難…フェザー級での再起戦でパワー不足を露呈 会場からはブーイングも「黙ってろ」と強気
【関連記事】「仰天したということはない」フルトンが打ち明けた井上尚弥の衝撃ダウンへの“本音” 電撃再戦の可能性はあるか【現地発】
【関連記事】フルトン、フェザー級で前途多難な再起戦…井上尚弥戦以来1年2か月ぶりの実戦で判定勝ちもパワー不足は否めず