フェザー級の米逸材に訊いた「井上尚弥」 誰もが“打倒”を謳うモンスターとの近未来を「集中すべきではない」と語る理由【現地発】

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フェザー級でトップクラスの実績を残しているキャリントン。一大興行参戦後に話を訊いた。(C)Daisuke Sugiura

タイソンに望まれた異色興行への参戦

「もっといい戦いができたのかもしれないけど、最終的にはハイライトも作れた。ファンにいいショウをお見せできたのはよかったと思う」

 27歳の若者は終始、笑顔を浮かべながらそう述べた。その表情は爽やかで、無敗のトッププロスペクトが思い描く明るい未来が透けて見えてくるかのようだった。

【動画】井上尚弥に日本流の礼節 キャリントンがKO後に見せた異例の行動

 ボクシングのフェザー級の逸材ブルース・“シュシュ”・キャリントン(米国)は11月15日にテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで行われたダナ・クールウェル(豪州)との8回戦に判定勝ち。KOこそ逃したものの、2度のダウンを奪っての快勝で、デビュー以来の連勝を14(8KO)に伸ばした。

 この興行のメインイベントは、マイク・タイソン対ジェイク・ポール(ともに米国)という異色のカード。58歳の元世界ヘビー級王者がリングに復帰し、物議を醸した一戦だ。タイソンと同じブルックリンのブラウンズビル出身のキャリントンにとっても、このビッグイベントのリングに立った経験は大きな意味があったようである。

「この興行への出場を望まれたことにはとてつもなく大きな意味がある。マイク・タイソンが、自ら私のチームに出場を打診してくれたんだから。それだけでも光栄なこと。友人になり、彼の家にも招待された。すごい経験だったし、幸運だと感じているよ」

 賛否両論あった。とはいえ、7万人以上の大観衆を集めたタイソン対ポール戦は間違いなく2024年のボクシング界で最大の興行だった。そのアンダーカードに起用されたのは、単にタイソンの希望だったからではない。

 キャリントンは、直近12か月間で5戦全勝(3KO)。ハイレベルなパフォーマンスを可能にする身体能力と小気味いい連打を武器に勝ち続ける黒人ボクサーの実力と、そのスター性が高く評価されたからに違いない。

“シュシュ”・キャリントンと聞いてピンと来たボクシング・ファンは日本にも少なくないのではないか。今年6月に井上尚弥が足を運んだニューヨークでの興行で彼はブライアン・デ・ガルシアに8回TKO勝ち。試合後にリング上からお辞儀し、井上が手を振って応えたシーンはアメリカでもSNSで拡散された。

「井上が観に来てくれたことは本当にクールなことだった。まだ14戦を戦っただけなのに、僕の名前を知ってくれている人が日本にもいる。自分が正しいことをやっている証なのだろう。今後、もっと大きなことができればと願っているよ」

 近年、“モンスター”は、米ボクシング界でも文句なしのビッグネームとなった。だが、米国を拠点として活躍する選手の中に対戦相手候補が乏しいのが残念なところではある。そんな中で、キャリントンは近未来に「候補者」として浮上する可能性を持った数少ない一人に違いない。

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