なぜベガスでアフマダリエフより“無敗の24歳”は推されるのか 井上尚弥の次戦候補ピカソが秘める「理に叶った要素」【現地発】

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無敗街道を突き進む井上。このボクシング史に残る怪物との対戦は一筋縄ではいかないが、ピカソ陣営は「勝てる」と語る。(C)Lemino/SECOND CAREER

力量差は井上の断然優位。それでもピカソ陣営が試合を受け入れる理由は?

 少し気の早い予想を巡らせておくと、やはり井上が断然優位だろう。スピード、パワー、スキル、そして経験で“モンスター”が大きく上回る。サイズの違いは顕著になりそうではあるが、万能派とはいってもピカソは身長、リーチを生かした戦い方はまだ洗練されてはいない。また、井上のボディブローも効果を発揮しそうであり、まだ試されていないピカソの耐久力次第では早いラウンドのKO決着も考えられる。

 プロモーターを務めるベルトラン氏も今では全階級を通じて最高級の実力としての名声を確立させた井上の力量はもちろん認めている。

「イノウエはすべてにおいて優れたコンプリートファイターだ。頭がよく、コンビネーションは素晴らしい。パンチは出した手は必ず元の位置に戻る。すべての子どもたちの手本になるチャンピオン。センセーショナルなボクサーだ」

 もっとも、その一方で、百戦錬磨のプロモーターはこうも付け加えている。

「もしも私たちが試合を受けるとしたら、それは勝てると考えているからだ。勝てないと思ったら、試合はさせない」

 そう力説する背後には、年齢的にも今が伸び盛りのピカソのアップサイド(伸びしろ)への期待感があるのだろう。完全開花したとはいえないヤングコンテンダーが、メキシカンの熱い期待を背負って世界最高級のボクサーに挑む。これまで以上に集中して臨むビッグステージで、潜在能力がさらに引き出されれば――。

「イノウエと対戦できることを願っている。私の人生最大の試合になる。これまでの試合以上に(大学に)許可を求め、ボクシングに100%、集中させてもらっている。準備はできていると感じるし、ベストを尽くす」

 1月25日、メキシコでの興行時にテレビのインタビューを受けたピカソは生き生きとした表情でそう述べていた。ベイビーフェイスの秀才ボクサーは、これまでの井上のキャリアに欠けていた“メキシコ人ライバル”になれるのかどうか。すべては今後の井上陣営との対戦交渉の行方と、あとはピカソの成長次第である。

[取材・文:杉浦大介]

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