【現地発】日本でも話題になった「フェザー級が限界」の真意 井上尚弥が語っていた“目指すもの”「人間の限界はありますから」

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誰よりも階級制のスポーツにこだわりを持ってきた井上。(C)Getty Images

ネガティブではない“フェザー級以上では通用しない”の真意

 先日、井上が階級を上げていくのは、“フェザー級が限界と語った”という記事がリングマガジンに掲載され、大きな話題となった。

 実はこのインタビューは、筆者が今年2月に収録した内容の一部がカルデナス戦後に抜き出されたものであった。それが日本語に訳され、翻訳の翻訳という形で日本メディアでも記事になったが、原文は以下の通りである。

「フェザー級が最後ですね。別にそれ以上は望んでいないです。身長が170cm以上あって、持て余していたら別ですけど、人間の限界はありますからね。スーパーバンタム級でも1つ1つしっかりと筋肉をつけて、フィジカルを作って挑んでいっています。まだ今の時点でフェザー級にも挑戦していないので、それ以上は考えられないです」

 ここでの井上の言葉から感じられるのは、“フェザー級以上では通用しない”というネガティブな考えではない。自分に適した階級で、満足できる身体を作り上げていきたいという強固な意志。そんなフィロソフィを持っているのであれば、マニー・パッキャオ(フィリピン)のような階級超えに興味を示さないのは納得できる。あくまで井上とパッキャオのどちらの考え方が優れているということではなく、目指すものが違うのだ。

 一時は視野に入れた階級上げ下げは確かに興味深い。だが、コンディション調整はより複雑になる。まだ、フェザー級の身体に至ったわけではなく、今の段階で“最高の井上尚弥”を見せられるのはスーパーバンタム級だと信じたのであれば、この階級に腰を据えることは適切に違いない。また、9月にアフマダリエフ、来春に中谷と、同階級では強敵との戦いが待ち受けている。しかも2025年は年4戦というハードスケジュールなのであれば、それはなおさらである。

「フェザー級でも大きいくらいで、スーパーバンタム級が適正でもあると思っています。バンタム級の時にも『バンタムが適正だ』と言っていましたけどね。それが今ではスーパーバンタム級が適正になってきているので、フェザー級に上げてどうなるかはわからないです。ただ、今はそういう考えです」

 常に上を見続ける“モンスター”が、「フェザー級で身体を作っていきたい」と感じるときがいずれくる。その時期はもう来年に迫っているのかもしれない。自身の身体をよく知る井上と彼の陣営は、今後もその時々で最善の判断をしてくれるはずであり、それぞれの階級で最高の作品を提示してくれるのを楽しみにしておきたい。

[取材・文:杉浦大介]

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