【現地発】日本でも話題になった「フェザー級が限界」の真意 井上尚弥が語っていた“目指すもの”「人間の限界はありますから」
カルデナス戦を終え、今後に向けたプランが次々に伝えられる井上。その中にはフェザー級への転級も含まれている。(C)Getty Images
フェザー級挑戦が先送りで見据える“青写真”
“モンスター”のフェザー級挑戦は先送りに――。5月下旬、世界スーパーバンタム級の4団体統一王者・井上尚弥(大橋)の近未来のプラン変更が一斉に報道された。
来る9月14日に名古屋で予定されるWBA同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦をクリアすれば、井上は12月にサウジアラビアでフェザー級に転級する計画がすでに明かされていた。
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そこで1戦限定ながらWBA世界フェザー級王者ニック・ボール(英国)に挑戦後、来年5月には再び階級を下げてWBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M・T)と東京ドームで対戦するというのが、井上陣営の青写真だった。
ただ、ここで路線が修正され、12月はアラン・ピカソ(メキシコ)、もしくはサム・グッドマン(豪州)との指名戦が有力という。依然としてサウジアラビアの娯楽長トゥルキ・アラルシク氏が陣頭指揮を取る『Riyadh Season』の意向次第で変わる可能性は残るものの、現時点で井上側の希望がスーパーバンタム残留であることは間違いないのだろう。
「これこそが新たな挑戦ですよね。そういった挑戦で成功していけば、それこそ日本人が誰も辿れない道になると思います」
今年1月、米誌『Ring Magazine』用に筆者が収録したインタビューで、井上はフェザー級とスーパーバンタム級の“階級上げ下げ”についてそう述べていた。確かに野心的なプランであり、リスクがあるゆえに余計に魅力的。これまで快進撃を続けてきた4階級制覇王者が新たなモチベーションをかきたてられるのであれば、それもいいのではと思えた。
一方で、よりトラディッショナルな方向性に傾き、まずはスーパーバンタム級で戦い切りたいと考えたのであればそれも理解できる。そちらに舵を切った真意は本人の言葉を待たなければならないが、歓迎する支持者は多いのではないか。
ここで推測するなら、32歳を迎えた井上は、現時点で最高のパフォーマンスを見せられるのは今戦っている階級であると、ラスベガスで迎えたラモン・カルデナス(アメリカ)戦を前後して改めて感じたのではないだろうか。
「フェザー級にいくために(身体を)作るんじゃなくて。フェザー級の身体に来た時に上げるっていうイメージ。これまで(の昇級の過程)もずっとそうです」
かつて井上は階級を上げるタイミングをそう語った。そして、絶対王者は5月4日のカルデナス戦の後、こうも話していた。
「この階級で身体を作っていく。できる限りこの階級で戦います」
元世界バンタム級王者・辰吉丈一郎氏は自身のボクシングの試合を“作品”と呼んだが、それに近い趣を井上にも感じることがある。目先の勲章やビッグマネーももちろん大事だが、追い求めるのはボクシングの質。攻撃的な戦いでファンを喜ばせる作品を常に提示していくと同時に、クオリティの高い内容を見せ続ければ、最高級の勲章やお金も付随してくることをもう十分に理解しているのだろう。






