井上尚弥の”圧巻KO劇”を識者はどう見た?井上の第二の師匠が見解「遠距離もフルトンの土俵ではなかった」
8ラウンドTKOでフルトンを沈めた井上。階級を上げてパワーが増した印象だ(C)Getty Images
やはり”モンスター”は”モンスター”だった。
7月25日に東京・有明アリーナで行われたタイトルマッチで、WBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者のスティーブン・フルトン(米国)と対戦した井上尚弥(大橋)が、8ラウンドTKO勝ちで4階級制覇を成し遂げた。階級を上げて迎えた初戦という難しい試合であったにも関わらず、難敵を退けたチャンピオンの戦いぶりは、まさに圧巻だった。では、識者の目に井上の勝利はどう映ったのか。ロンドン五輪ボクシング・フライ級日本代表であり、井上が「第二の師匠」として慕う、須佐勝明氏に話を聞いた。
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強い、そのひと言です。1ラウンド目から驚かされました。フルトンが得意とする遠距離でも優位に戦いを進めていた。フルトン選手は遠距離が得意なので、ある程度駆け引きになるのかなと思ったんですが、冒頭から井上選手のジャブが当たり、相手のパンチが当たらない展開。遠距離の駆け引きでも勝っていたので、この試合は負けないだろうなと、その時点で感じました。
井上選手は階級を上げた初戦という気負いもなく、自分のリズムでボクシングをしていました。試合は3ラウンドくらいまではフルトンがちょっと下がって戦っていたんですが、4ラウンドくらいから切り替えて前に出て行くようになると、それに対して井上選手はガードを低くして懐を深くして入らせないように対応していました。
このあたりの駆け引きが本当に頭脳戦になっていたので、凄く面白かったですね。遠距離はフルトンの土俵だったはずが、井上選手の土俵になっていました。だから、フルトンが前に出るという予想外の構図ができたんです。
井上選手はジャブボディーを突いて、そこから右ストレートを上に返し、最後はフックで倒しましたが、途中のラウンドでもフルトンが結構被弾してる場面がありました。パンチのもらい方がどんどん悪くなっていたんですね。それでだいぶダメージが蓄積していたということです。フルトンとすれば、なかなかポイントも取れないし、ボディーを効かされてガードを下げさせられたところで上のストレートですから、もう完勝ですよね。
ただ、フルトンも強かったと思います。フルトンとしては距離を取って戦いたかったはずですが、分が悪いとみるや前へ出て食いつき、ポイントを取ろうとした。最後はKOされましたが、採点を挽回しようと勇気を持って前に出てきたし、さすがチャンピオンだと感じさせてくれました。