未上場からスポーツを支え、上場へ――ニューズドテック粟津浜一代表が語る「スポーツ×データ×端末」の必然
“発信者”田中大貴を取締役に迎えた理由
こうした「設計」を強化する中で、粟津は「発信」の重要性を再認識し、田中大貴を取締役に迎えた。粟津は、その理由を次のように語る。
「知名度や露出目的ではない。スポーツをリスペクトし、その文脈を正しく理解した上で、ビジネスの言葉に翻訳できる人が必要でした」
フジテレビ時代から仕事ぶりを見てきた中で、アスリートへの向き合い方や、メディアの動きを逆算できる視点を高く評価していたという。
「記者会見や発信の設計が変わった。どう伝えれば世の中に届くか、その精度が一段上がりました」
単なる起用ではなく、経営に関わる立場として迎えたことも重要だった。
「会社の一員として、同じ方向を向いて回していく覚悟がある人でなければ、取締役には迎えられません」
始球式の失敗が突きつけたもの――「正しい動かし方」と「正しい仕事」
スポーツと仕事の共通点について語る中で、粟津が「最も腑に落ちた体験」として挙げたのが、始球式で味わった苦い経験である。頭の中には明確なイメージがあったにもかかわらず、実際の動きはまったく噛み合わなかった。
「正しい動かし方をしないと、怪我をするか、パフォーマンスが出ない。仕事も同じで、できる人はアウトプットに向けて自然とタスク分解ができている」
結果だけを真似しても、本質を理解していなければ再現性は生まれない。身体操作の失敗を通じて、その事実を強く実感したという。
この気づきは、スポーツ支援を続ける理由にも重なる。スポーツの価値は勝敗や感動だけではなく、目標設定から逆算し、修正しながら積み上げていくプロセスそのものにある。その構造は、経営や組織づくりと深く通じ合っている。
スポーツ支援は“寄付”ではなく“設計”
ニューズドテックの歩みが示しているのは、スポーツ支援を善意や情緒で終わらせない方法論だ。
「応援して終わり、では意味がない。現場で何が起きているのかを知り、データを取り、事業に返す。そこまでやって初めて“支援”だと思っています」
未上場の段階から支え、現場でデータを取り、事業に返し、企業として成長する。その循環を設計することで、スポーツ施策はコストではなく、確かな投資へと変わる。
「スポーツも経営も、結局は同じです。目標を決めて、逆算して、足りないところを一つずつ埋めていく。それを続けられるかどうかです」
目標を定め、逆算し、積み上げる――そのプロセスを、粟津は今も事業の中で実践し続けている。そして上場を一つの通過点と捉え、端末とデータを起点に、スポーツの現場から育成年代、さらには地域社会へと価値を広げていく次の構想を描いている。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]






