未上場からスポーツを支え、上場へ――ニューズドテック粟津浜一代表が語る「スポーツ×データ×端末」の必然
スポーツ支援は「コスト」ではない。事業と結びつけてこそ、意味を持つ。
そう語るのは、ニューズドテック代表取締役社長の粟津浜一である。同社は、スマートフォンのリユース・レンタルやモバイル端末を起点としたデータ活用を強みに、企業や現場のDXを支えてきたテクノロジーカンパニーだ。
粟津は、中日ドラゴンズのスポンサーとしてスポーツに関わり、支援を「露出」や「善意」で終わらせるのではなく、データ取得から事業への還元までを一貫して設計してきた。その積み重ねは、未上場企業としての成長戦略とも重なり、12月22日、東京証券取引所「TOKYO PRO Market」への上場という一つの節目につながった。
本稿では、スポーツと経営に共通する「逆算のプロセス」を軸に、粟津が描いてきた支援の思想と実践、そして先に見据える構想について、同社取締役で元フジテレビアナウンサーの田中大貴が話を聞く。
「スマホでスポーツを見る時代」だからこそ、親和性が高い
スポーツとの接点を持った理由について、粟津は「情報収集の中心がスマホに移った現実」を挙げる。試合の視聴にとどまらず、データの確認、選手の分析、戦術の共有まで、いまや競技現場とファンの双方にとってスマートフォンは欠かせないインフラとなった。
「スマートフォンのリユースやレンタル、アプリ開発を手がける自分たちの事業は、気づけばスポーツと同じ場所に立っていました」
スポーツは“見るもの”から、“触れ、分析し、共有するもの”へと変化しており、その中心に常に端末がある。だからこそ、ニューズドテックの事業領域とスポーツは自然な形で重なっていった。
また粟津は、スポーツ支援を一過性の施策として終わらせないことの重要性も強調する。プロ野球から育成年代まで、スポーツの現場は広く、多層的だ。
「プロの世界だけでなく、少年野球まで“場”は広い。スポンサーは増えていますが、まだ十分とは言えない領域も多い。トップ層だけに資金や関心が集まっても、スポーツ全体の底上げにはつながりません」
だからこそ、企業が現場に入り、継続的に関わりながら価値を循環させていくことが重要だという。事業と結びついた形で支援を設計し、成果を社会に返していく。その積み重ねが、スポーツ界全体の持続性につながっていくと粟津は考えている。
原点は『マネーボール』――データ分析は“思想”である
粟津の原体験として語られたのが『マネーボール』だ。弱いチームがデータ活用によって勝ち筋を見出す構造に衝撃を受け、以後「データ分析」は事業の根幹に据えられてきた。
「弱いチームがデータを使って勝つ。フラットに見て、特定の指標にターゲットを絞り、そこを軸に展開していく。あれが自分の原体験として強く残っています」
スポーツでデータを活かすためには、データ以前に「デバイス」が不可欠になる。粟津が強調するのは、端末の故障が、そのまま現場の停止につながるという点だ。
「スカウトは写真を撮れなくなるし、データも入力できない。選手もそれを見ながら判断できなくなる。だからこそ、スマホやタブレットのメンテナンスは非常に重要です」
“看板スポンサー”では終わらせない――1500サンプルを事業に還元
上場までの道のりについて、粟津はスポーツの強化プロセスと重ねる。
「目標があって、そこに対して逆算し、今の立ち位置や強み、弱みを整理していく。上場もまさしく同じ。ゴールから作るのか、足元から成り行きで進むのかで、結果は大きく変わります」
金メダルや記録更新と同様に、上場もまた「全員が行ける場所ではない」。だからこそ、プロセスの設計が重要になるという。
ニューズドテックのスポーツ支援の特徴は、単なるスポンサーに留まらない点にある。粟津は、球場内で約1500サンプルのアンケートを取得し、事業に直接活かしたと語る。
調査で浮かび上がったのは、スマートフォン利用者の最大の悩みが「バッテリー」であるという事実だった。
「一番気になるのはバッテリー。交換を理由に買い替える人が多い。ならば“劣化していますよ”と適切に伝えられれば、買い替えサイクルを短くできます」
中日ドラゴンズを支援する背景には、東海地方での認知向上や取引拡大といった地域戦略も含まれている。外からは“ファン企業の支援”に見えても、内側ではデータ取得から事業回収までが設計されていた。





