諸刃の剣に映る矢野監督の今季限り退任表明 一部メディアは早くも後任候補探しに奔走
突然の表明に球界が揺れた。キャンプインを翌日に控えた1月31日、阪神・矢野燿大監督が今季限りで退任することを選手、コーチやスタッフらに告げたと明らかにした。
どのチームも行うキャンプ前日ミーティング。あらゆる指揮官が所信表明の場として、今年1年間表現したい野球の方向性を示す。あるいはチームの士気を高めようと、檄を飛ばす。あり方は人それぞれ。だが、今年の阪神・宜野座キャンプ前に行われたそれは、かつてないインパクトをもたらすものだった。
「今シーズンをもって退任しようと思っている。選手にも伝えた。いろいろ考えるところがあった」
矢野監督は昨季で3年契約を満了。契約最終年の2021年は一時は首位を走りながら、最終的にヤクルトに逆転を許し2位に終わった。就任後3年間の順位は3位、2位、2位の順番。常に優勝を求められる関西の人気球団において、満足のいく成果とは言えなかったかもしれない。それでも球団は3年連続Aクラスの実績を評価し、今季は1年契約での続投を決めた。ただ、契約延長といえば複数年が前提の世界で、1年契約というのは球団側からすれば「ダメなら今季限り」という意思表示でもある。そのオファーが、矢野監督に潔い幕引きを決断させるきっかけとなった可能性はある。
また複数のメディアでは、主にネットメディア上のファンからのコメントを中心に、世論からは激しい逆風が吹き続けており、そのことに辟易していた様子を伝えている。采配一つでも、心ない言葉で罵声を浴びせられる立場ではある。昨年はヤクルト戦で村上宗隆と一触即発となったサイン盗み疑惑など、いわゆるネット民に矛先を向けられる場面がまま見られた。
とはいえである。ネット民の声が世論を反映しているなどとは、誰も思ってはいまい。あくまで世論の一部が、時に先鋭化した表れでしかなく、まともに取り合う必要などあるわけない。それでも家族らが目にすることもあり、矢野監督にとっては神経を使わざるを得ない問題として、ボディーブローのように響いていたのであろうか。