糖尿病で手がしびれる? ― それは神経障害の初期サインかもしれません
4. 放置するとどうなるか
糖尿病性神経障害を放置すると、次のような問題が起こります。
・感覚低下によるけが・火傷・感染症
・手足の筋力低下による巧緻動作障害
・自律神経障害(立ちくらみ・便秘・発汗異常など)
手足の感覚が失われると、傷や潰瘍に気づかず悪化することもあり、重症例では壊疽や切断につながるリスクもあります。
5. 手のしびれを改善するには
(1) 血糖コントロールを整える
神経障害の進行を止める最も重要な方法は、血糖値を正常に近づけることです。
・食事:糖質のとりすぎを避け、野菜・タンパク質を意識
・運動:ウォーキングやストレッチを習慣化
・薬物治療:インスリンや内服薬を適切に使用
(2) 神経修復を助けるビタミンB群
ビタミンB1、B6、B12は神経の代謝を助け、しびれ改善に有効です。サプリよりも食事または医薬品(メチコバールなど)での補充が推奨されます。
(3) 痛みが強い場合の治療
しびれや痛みが強い場合は、
・プレガバリン(リリカ)
・デュロキセチン(サインバルタ)
などの神経障害性疼痛治療薬を使用することもあります。
(4) 生活習慣全体の見直し
・禁煙(血流改善)
・節酒(神経毒性を防ぐ)
・睡眠の質を確保
まとめ
・手のしびれは糖尿病性神経障害の初期サインである可能性がある。
・左右対称に出ることが多く、放置すると進行・感覚鈍麻へ。
・改善には血糖コントロール+ビタミン補充+生活習慣改善が不可欠。
参考文献
日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』
Pop-Busui R, et al. Diabetic Neuropathy: A Position Statement by the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2017.
Tesfaye S, et al. Diabetic neuropathies: update on definitions, diagnostic criteria, estimation of severity, and treatments. Diabetes Care. 2010.
[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)
慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。






