「これをやっていけば成長する」堂安律を変えた独名伯楽の妙案 日本代表にも好影響を与える“10番”の成長曲線【現地発】

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守備面でも成長を実感する堂安。その姿はなんとも頼もしい。(C)Getty Images

考えるより先に身体が動き、アクションがリンクする

 より厳しい環境に身を委ね、短期的な結果に振り回されずに常にその先にあるものへ向けてアジャストしていく。これによって堂安は、ある時に「きつい」と思っていたことが、自然と「当たり前」になってきているに気づいた。

 考えるより先に身体が動き、一つひとつのアクションがどんどんとリンクする。そうしてウイングバックからゴール前への飛び込む頻度も増え、昨季終盤にはゴールも増えだした。

 すべては繋がっている。ゴールを決めたある試合後、堂安はこんな話をしてくれた。

「右サイドで崩して中に入っていくのが、ポジションがウイングバックで少し下がり目であっても意識はしてるんで、よかったかなと思います」

 今シーズンはユリアン・シュースター新監督の下、また本来のポジションである攻撃的MFへ戻った。ただ、ウイングバックでの経験が備わり、今までよりも幅広いプレーができるという感触をつかんでいる。

「プレー範囲は広がっていると思います。守備の仕方のところでもいろいろ学びました。本来自分の生きるポジションはウイングなので、そこはこれからまた伸ばしていきたいなと思います」

 選手としてのスタンダードレベルはぐっと上がり、「シュート数というのは今年一番意識しているところ。そこの質ももちろん大事ですけど、50%のシーンでもシュートを狙っていくとかは意識していこうかなと思っています」という堂安。ゴールへの意識も変化している。

 これまでは右サイドからカットインをして左足シュートというパターンが強みだった分、相手に警戒された。シュートに持ち込もうにも守備陣にコースを消されてしまう。だがサイドでの起点作り、逆サイドに展開されたときの飛び込み、ビルドアップ時に外だけではなく中に入ってもらう動き出し、味方との連係プレーなど、プレーの幅と質がアップしたことで相手も絞り切れない場面が増えた。

 そうすることで、得意だったカットインのシュートパターンも生きてくる。実際、今シーズンのブンデスリーガ4節のハイデンハイム戦では、元オランダ代表FWアリエン・ロッベンを彷彿とさせる見事な左足シュートでゴールをマークした。

 たしかに成長はしている。だがここで満足はしない。貪欲に、さらなる成長を目指して堂安は今日も走る。





[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

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