扇久保博正を奮起させた妻の言葉 憧れた猛者を越えた先に見据えるタイトルへの野望「世界トップだと再認識できた」
1ラウンド目から徹底的に磨き上げた“対策”は効果を発揮した。1分30秒過ぎにドッドソンをグルっと振り回してテイクダウンを奪うと、終了間際にはパウンドの態勢から烈火の如くパンチを浴びせ、攻勢を強めていった。
2ラウンド目以降はドットソンに間合いを詰められ、寝技への警戒が強められた。それでも扇久保は冷静さを失わなかった。互いにフックやローキックを繰り出しあう攻防戦が続くなかでも「」と欲を出さず、元UFC戦士の動きをクレバーに見定め続けた。
試合終盤にはテイクダウンディフェイントを見せてから、近距離からの右ハイキックをガードの上から食らわせると、左の上段蹴りも打ち込んだ。ドットソンの自信を持つ打撃でも凌駕した。
結果的に3-0の判定勝ちを収めた。まさに完勝と言えるパフォーマンスには、努力を積み重ねた本人も自信を深める。試合後の会見で36歳のベテラン戦士はこう語った。
「対策通りにできたかなと思います。僕の中ではこのドットソンとの試合はUFCでも組まれていてもおかしくないカードだと思っているんで。彼はUFCで2回タイトルマッチを戦っていて、フライ級では本当に世界トップレベルの選手。その選手に勝てたってことは自分がフライ級では世界トップレベルだと再認識することができた。僕の中ではかなりトップレベルに嬉しい勝利です」
今後は、この大みそかに堀口恭司が神龍誠を倒して王座についたフライ級のタイトル戦線に挑む。「やっぱり僕は格闘家。試合で勝つってことが本当に幸せなんだなと改めて思いました」と充実感を滲ませた扇久保。憧れの存在を越えた男はまだまだ色褪せない。
[取材・文:羽澄凜太郎]
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