「誰もが苛立っている」――空前絶後の“朗希狂騒曲”は何が問題なのか 中南米の野球指導者たちが悪影響を訴える裏事情

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佐々木とドジャースが合意する可能性は65%と米記者が報じた(C)Getty Images

ドジャースが10代選手との契約を白紙に

 佐々木朗希の名は、今オフの日米両球界でトレンド化した。昨シーズン終了後にポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ移籍を公表して以来、瞬く間に話題沸騰となった。

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 今オフの米移籍市場はフアン・ソト(→メッツ)やブレイク・スネル(→ドジャース)、コービン・バーンズ(→ダイヤモンドバックス)など大物のFA選手も少なくない。その中で佐々木の存在は異彩を放つ。MLBの労使協定で決まった「25歳ルール」以下の23歳であるため、契約はマイナー契約に限定。さらに年俸や保証金も年間500万ドル(約7億2500万円)以下に制限されるため、獲得球団にとってみれば、青田買いに近い破格の安さなのだ。

 大物代理人のジョエル・ウルフ氏のサポートもあり、20球団以上から関心を集めたという佐々木。一方で「令和の怪物」の移籍動静にはハレーションも広まっている。

 というのも、前述のルールからMLBでは25歳以下の国際選手獲得の際に用いられる年間のボーナスプール内で契約をする必要がある。そのため、佐々木獲得を目論む複数球団が資金捻出のために、中南米の若手有望株との契約を先延ばしにするケースも出始めている。実際、ドジャースは今オフに契約金110万ドル(約1億7100万円)の契約で口頭合意していたドミニカ共和国の強打の遊撃手ダレル・モレル、同じく強打の外野手オーランド・パティーニョとの契約を白紙にしたと報じられている。

 無論、佐々木側に非はない。彼らはあくまで現行ルールに乗っ取って、ポスティングシステムを利用したに過ぎない。むしろ、契約がマイナー契約に限定されるのは、アスリートとして少なからずリスクもある。

 とはいえ、メジャーリーグ行きを目指す中南米の若手選手たちにとって、プロとしてNPBで5年の実績を持つ佐々木と同じ枠組みの中で契約を争う必要を強いられるのは、小さくない問題。ゆえにルールの変更を求める動きが強まっている。

 ドミニカ共和国のメディア『Z101 Digital』のヘクター・ゴメス記者は、現地時間1月12日に、ドミニカ共和国の野球指導者たちがMLBに対し、各球団が使用する国際ボーナスプールの対象から「ロウキ・ササキのようなプロ選手を除外することを要望している」と伝えた。

 中南米の野球事情に精通するゴメス氏は、自身のXでこうも綴っている。

「(佐々木の件で)ドジャースを含むいくつかの球団が、今のボーナスプールで獲得可能な最も大きな国際有望株との契約を失っている。また、ドミニカ共和国のような国でも混乱を引き起こしており、有望株とそのチームが一夜にして得たはずの資金を失っているのも目の当たりにした」

「ササキが受け取る金額は、以前にそのチームと契約することに同意していた選手たちの懐から出て行くことになる。ゆえにドミニカ共和国のトレーナーたちが彼を別の方法で扱ってほしいと考える理由は明らかだ。しかし、実際にこのような変更を実施するのは言うは易く行うは難しく、ササキのような選手は唯一無二の存在であるという事実を無視している。このような才能を持つ選手が、数百万ドルを諦めて、数年早くアメリカに来ることは稀だ」

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