高1の神宮で放った“異彩” 井端ジャパン招集が確実視されるドラ1候補・宗山塁のプロスカウト垂涎の凄みは何か?
井端監督も評価する技術とは?
そんな打撃以上に評価が高いのがショートの守備である。自身も現役時代に名手として知られた侍ジャパンの井端監督も昨年6月に大学日本代表で臨時コーチを務めた際に間近でプレーを目の当たりにし、「悪いところが見当たらなかった」と話している。特筆すべきポイントは、打球に対して力まず、常に余裕を持ってアプローチできているところ。そのため難しいバウンドにもグラブがスムーズに出て、悠々と処理するケースが多い。
また、フットワークに関しても細かいステップが光る。井端監督も「二の足だけでなく三の足くらいまで出て対応できる」と評価する。三遊間の深い位置からも一直線でファーストまで強い送球が投げられる肩の強さも備えており、試合でのプレーだけでなくぜひシートノックから見てもらいたい選手である。
さらに関係者たちの評価を高くしているのが、常にレベルアップしようという姿勢がみられる精神力だ。
攻守に高いレベルのプレーを見せている宗山だが、単純な脚力はそこまで突出しておらず、一昨年12月の大学日本代表候補合宿で行われた50メートル走のタイムも24人中15位タイという結果に終わっている。
しかし、彼はそこから走力強化に着手。約半年後に行われた昨年6月の合宿では、短期間で0.2秒タイムを短縮してみせた。ちなみに2度の合宿に参加していた選手の中で、タイムの伸び率では宗山がトップだった。既に高い評価を得ていながらも、基本的な脚力アップに地道に取り組んで数字として成果を出せるという点は見事という他ない。
冒頭でも触れたようにプロスカウトからの評価も下級生の時から一貫して高く、よほどの不振や大怪我に見舞われない限りは、複数球団による1位指名の可能性は極めて高いと言える。昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿でも、これまでにない数の報道陣が宗山を目当てに訪れており、すでに“宗山ドラフト”が幕を開けていることを感じさせた。
宗山にとっては、これからドラフト会議当日まで常に高い注目を集めるとともに、プレッシャーもかかる日々が続く。それを乗り越え、結果を残すのが本当のスターとも言えるのではないか。まずは3月に行われる侍ジャパントップチームの強化試合で、持ち味を存分に発揮し、全国の野球ファンを唸らせるようなプレーを見せてくれることを期待したい。
[取材/文: 西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
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