プロの壁にぶつかった度会隆輝の今 “黄金ルーキー”が酷暑の二軍で重ねた努力の日々「結果を残すことがどれほど大事か」【DeNA】
プロの高き壁にぶつかりながら、「成功」を掴むための努力を重ねてきた度会(C)萩原孝弘
二軍で残した圧倒的数字に見た努力の証
「またここの景色が見れて本当に幸せです」
昨年のド派手デビューから約1年半。9月15日の巨人戦後に立ったお立ち台で、度会隆輝の目からは熱いものが込み上げていた。
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24年に“ゴールデンルーキー”として鳴り物入りで加わったプロ1年目は、打率.434を残したオープン戦から開幕と爆速でスターの階段を駆け上がったが、シーズン半ばから急失速。「課題は走攻守すべてです」と猛省した度会は、迎えた2年目の今季に飛躍を誓ったが、7月半ばにはファームでの再調整を命じられた。
酷暑の夏、度会はあるテーマに沿って必死に取り組んだ。降格後にファームで残した打率は.398と圧巻だったが、積み重ねた37本のヒットの内、二塁打は4、三塁打1、ホームランは0。それは「ファームにいる間は、ヒットを打つテクニックに重点を置いてやっていました」とあえてミート中心のバッティングを心がけた証だった。
そこには降格前の1軍での打率.224が示すように「やっぱり上のレベルになるとヒット1本を打つこと、結果を残すことがどれほど大事なことなのか」と痛感させられた率直な想いもあった。
さらに「ミートとパワーの向上は、僕が野球をやっている間はずっと伸ばしていきたいところです」とパワーアップにも着手した度会は手応えを感じていた8月下旬、ついに再昇格の知らせを受けた。
再昇格後はシュアなバッティングを念頭に置いた。類まれなバットコントロールを持つがゆえに、たとえ「悪球」でもヒットにしてしまうこともあるが、一軍レベルのピッチャーから打てる確率は下がることは身を持って知った2年目。打つべきボールの見極めは確実性に直結することも身についていた。実際、昨年の打数(251)と同じ数を消化している今季は、三振が43から36に減少。一方で四球数は12から24へと倍増している。
殻を破るため、地道に取り組んだ『選球、ミート、パワーの底上げ』。このファームでの努力が目に見える形となって現れたのは、9月14日の一発だった。
巨人の右腕・田中瑛斗が投じたボールをよく見て引き付けてから、しっかりとミート。そしてパワーアップした肉体からの力強いスイングで弾き出された白球は、横浜スタジアムのレフトスタンドへ飛び込んだ。これには本人も「逆方向にああいう形で打てたのは、自分の中でも今後につながってくると思います。しっかりと継続してやっていきたいですね」とレベルアップを口にした。
また、翌日の巨人戦でも度会は成長の跡を見せる。5回2死満塁の局面で打席に立った背番号4は、田中将大からレフトへ痛烈なライナー打球を放った場面にも「追い込まれてから低めの落ちる球を逆方向にしっかり打てたのは、下半身の重心移動が逃げずにできたからこそ」と確かな感覚を掴んでいた。結果は左直での凡退だったが、逆方向への強い打球は4打席目に右翼席へ放った糸を引くようなアーチに繋がったとも言えよう。
「状態はいいですね。でも今に甘んじることなく、継続してやっていきます。シーズン最後までやり抜けるように準備していきたい」
そうキッパリと語った言葉通り、この日に度会がクルマに乗り込んだのは、試合が終わって約1時間半後。その時間に慢心せず「やるべきこと」に集中していく決意が滲んだ。






