「全員辞めると思いますよ」――衝撃のチーム解体に主力も憤る異例事態 元中日OBの社会人野球クラブ監督解任劇の舞台裏
“選手も憤る解任劇。元プロ監督は一体なぜ?
クラブからいきなり突きつけられた“クビ宣告”。理由は、都市対抗へ進めなかったことにあると説明された。
「もちろん東京ドームに出場する事が第一目標だったことは確かです。去年の冬から4年間で1番ハードな練習もしましたし、選手には厳しい声をかけてきました。都市対抗を目指してはいましたが、やっぱり野球を知らない選手ばっかりで、打つ、打たない、全員でカバーをしていくっていう事は全然できなかった。野球を知っている有名大学から選手を呼べた訳でもないし、とんでもなく難しい挑戦なのはわかっていました」
わずかな希望に賭け、最善の道を探った。亀澤には「そんな選手たちがもし都市対抗に出場できたら、その先にはすごい事が待っている。そんな想いを抱き続けて選手とは接してきました」と未完成な選手たちの未来に目を向けた強い想いがあった。
しかし、待っていたのは、よもやの非情宣告。まさに青天の霹靂だった。
今季からGMとしてチームに加わった米村理氏との方針のズレが多少なりともありながら、この時期での解任は、誰も想像していなかった。
手は尽くしていた。亀澤自身も、無名大学から独立、そしてプロ野球と渡り歩いた経験と独自のネットワークを駆使し、全国を周ってスカウティングをやってきた。そんな情熱に溢れた指揮官の解任に、主力選手の一人は「あり得ないですね」と言い切り、憤りを隠さない。
「僕たちは監督の熱い思いを訴えかけられ、さらに何度も説得されてこのショウワコーポレーションに入団を決めたんです。成績も悪くなってはないし、ここからまた日本一を獲るぞという想いしかなかった。本当に悔しい思いしかありません」
その主力は、怒気を含んだ口調で胸の内を漏らす。事実、エースである高田萌生も補強選手として社会人野球界の名門・JR西日本に指名され、ショウワコーポレーションの競争力は、着実にアマ球界に浸透している現実もある。
それでも監督解任のチーム方針は変わらない。それだけに前出の主力選手は、自身を含めたチームメイトの去就も「たぶん全員辞めると思いますよ」と吐き捨てる。その言葉を証明するように、元東北楽天の髙田萌生、引地秀一郎、元中日の福島章太の元NPB選手に加え、元楽天の福森耀真ピッチングコーチに、元西武の松本直晃ヘッドコーチら、チームの中核を形成しているメンバーも、こぞって退団の道を選んだ。
故郷への還元に想いも抱き、心血を注いで、いちから築き上げたチームは、ここで事実上解体となる。さらに「監督してこのチームの指揮を執るのは、とりあえず8月16日の予定です」と“最後の日”も間近に迫る。
それでも亀澤は雑音を封印し、「8月9日から始まる予選を勝ち抜いて、クラブ選手権の全国の切符は必ず獲らないといけない。今はその想いしかありません」とターゲットをひとつに絞る。懸念は「選手のモチベーション」。「下がっている今、どれだけベストな状態に持っていけるかに懸かっている」と自分自身も奮い立たせ、チームのベクトルをふたたび同じ方向に向ける作業に着手する。
ラストの舵取りも「すべては選手のために」を掲げた。常にプレーヤーファーストで突き進んできた指揮官は「最強のクラブチーム」を作り上げた事実を世間に証明するために、有終の美にこだわり、戦い抜く覚悟だ。
[取材・文/萩原孝弘]
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