NPB未経験の18歳はメジャー昇格の狭き門を突破できるか? 森井翔太郎に提示された最大3億円の“好条件”が示す可能性
メジャー昇格への道はかなり険しい。しかし――。
また、アマチュアからのメジャー挑戦が容易ではないと言える理由としては、メジャーの裾野の広さも挙げられる。
日本では、毎年1球団がドラフトで指名する人数は支配下で6人前後であるケースが多く、育成を含めて10人を超えるのはソフトバンク、巨人の2球団くらいである。一方でメジャーは各球団20人が上限となっているが、多くの球団がそれに近い人数を指名。さらに海外からも多くのアマチュア選手を獲得している。
マイナーリーグまで含めた選手の数は日本の10倍近くになると言われている。そもそもメジャーは球団数も30とNPBの12と比べても多く、競争もし烈だ。その中でプロの実績がない選手が勝ち上がっていくのは簡単ではない。
ただアスレチックスの提示した契約条件が良さからも分かるように、森井の高い将来性は確かなものがある。
まず、大きいのが持ち味は打撃だけでなく、あらゆるポジションで高いポテンシャルを見せているという点だ。下級生の頃はサードを守る機会が多かったが、2年秋からはショートに転向。線の細さは気になる点も多かったが、守備範囲の広さとスローイングの強さは高校生離れしたものがあった。その高い運動能力を考えれば、内野だけでなく外野としてプレーできる可能性も高い。
そして、何よりも大きく評価されたのは、早くからメジャーでプレーすることを目標にしてきたという意識の高さではないだろうか。
近年、高校生や大学生でも将来はメジャーでプレーしたいということを口にする選手も増えているが、現実的な目標としてとらえている選手はまだまだ少ない印象が否めない。一方で学力の高い進学校に所属していた森井は有名大学からの誘いも多くありながら、あくまで目標はメジャーと全く関心を示さなかったというのだ。高校生の時点でここまで確固たる意志を持てる選手はそうそういるものではない。
前述したように、メジャー昇格への道はかなり険しいことが予想される。しかし、だからこそ挑戦する価値もあると言えるのではないだろうか。数年後にメジャーの大舞台でさらなるスケールアップを果たしたプレーを見せてくれることを期待したい。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
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