元フジ・田中アナ 独立を後押ししたアスリートの言葉とは?

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 みなさん、こんにちは。今日5月1日から新たなスタートを切り、人生のchapter2を迎える元フジテレビアナウンサーの田中大貴です。

 先月、ボクシングミドル級で日本史上初の防衛を果たした村田諒太選手。私はタイトルマッチ戦、初防衛戦とリング上でインタビューをさせて頂きました。あの2回のインタビュー、実は5年前のある日から繋がっていました。


 そして、このエピソードが今、新たな世界へ踏み出そうかどうか悩む方への力になれば嬉しいです。

「一歩踏み出せるかどうか、ここが全てです」

 これから5年前の1月、向かいに座る村田諒太選手が絞り出した言葉でした。

 その前の年、ロンドン五輪で史上初のミドル級金メダリストに輝いた村田選手。

 プロに転向するかどうか…

 アマチュア最強を掲げてきた当時27歳は今までにない悩みの中で選択を迫られていました。

「悩んでいます、どうするべきか…」

 年明けに村田選手からメールをもらい、僕でよければ相談しに乗るよということで昼食を共にしました。

 新たな一歩へ向けての挑戦。人生のchapter2をどんなchapterにするか様々な可能性を探る為、ス―ツ姿で挨拶回りをする合間を縫って僕に会いに来てくれました。

「ロンドンへ、指導者となるために留学しようかなとも考えています」

 これが、村田選手が学生時代からイメージしてきた自分の姿の一つでした。

「プロに転向して、世界チャンピオンのベルトを目指す…皆さんがそう期待してくれているのは本当に良くわかります。でも…」

 この「でも」の後に続いたのが、

「正直、怖さがあるんです。答えない世界。何が正解か?金メダルを首に掛けてチャンピオンベルトを目指す…夢があると同時に怖さを振り払えるか」

『怖さ』

 この言葉を口にした時の村田選手の苦悩の表情が今でも脳裏に焼き付いています。

「怖さを抱えながらでも、一歩踏み出せればいいんです。踏み出せれば進むしかない、やるしかない。また答えが出たらお伝えします」

 そして…

 その数か月後、村田諒太という男は「怖さ」と向き合いながら「踏み出す」のです。

 勝負のプロ転向。

 五輪金メダリストが史上初の世界チャンピオンベルトダッシュを目指すことを選択したのです。

 あれから4年6カ月後。

 世界チャンピオンとなった歴史的快挙、その後のチャンピオンインタビューで同じ言葉を吐露しました。

「エンダムとのダイレクトリマッチ。初対戦から155日間。本当は怖かったんじゃないですか?」

 リング上で私は敢えて彼に聞きました。

 返ってきた答えは…

「怖かったですよ、みんな追い掛け回すじゃないですか」

 私は続けて聞きました。

「どんな心の動きだったんですか?」

 村田選手は、

「でも、五輪の時もそうでしたけど、過ぎてしまえば大したことではなくて、やはり過ぎる勇気を持てるかどうか。やはり一歩踏み出せたことが全てです」

 5年前、プロ転向へ向け葛藤していた、あの時と同じ言葉でした。

「一歩踏み出す勇気。過ぎ去ることを怖がらない精神力」

 これこそが村田諒太という人間の最大の魅力であり、強さの理由だと思います。

 私事ですが、お世話になったフジテレビから飛び出すかどうか悩んでいた時、あのリング上でのインタビュー、あの村田選手の言葉が背中を押してくれました。

 土俵は違えど、研鑽を積んできたアスリートが紡ぎだす言葉の力。この言葉によって私のように人生が変わった方は少なくないと思います。

 また、いつか村田選手をインタビュー出来るのであれば、観る者の人生を変える言葉で表現してくれるはずです。インタビューをしていて心躍る人間・村田諒太。私は出会えて本当に良かったです。

 いつか世界最強・ゴロフキンと戦う姿を想像するだけで涙が出てきそうです。

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※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

田中 大貴 (たなか・だいき)

1980年4月28日、兵庫県小野市生まれの37歳。小野高では2年から4番で打線の主軸を担った。巨人・高橋由伸監督にあこがれてか慶應義塾大学 へ。4年春に3本塁打でタイトルを獲得。フジテレビ入社後は主に報道・情報番組とスポーツを担当。「とくダネ!」「すぽると!」ではバンクーバー五輪、第2回WBC、北京五輪野球アジア予選、リオ五輪キャスターなど様々なスポーツイベントを現地からリポートした。現在もスポーツニュース番組「スポーツLIFE HERO’」で土曜担当キャスターを務めるなど多くの番組で活躍。

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