「泣くな!」“負けたら終わり”の日々は、神童をどう変えたのか 恐怖と葛藤を抱えた那須川天心が師匠と歩んだ茨の道「病んで、どうしようもない時もあった」
敗北からの日々で那須川はリング外でも厳しさを味わっていた(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
打たれた“出る杭”
絶望の底から這い上がった。
井上に格闘技キャリア55戦目で初めて喫した敗北。自ら認めた地力不足で負けた結果に、世間は驚くほどシビアで、そして冷ややかでもあった。
伝統や文化を重んじるボクシング界にあって、敗北後もバラエティー番組などのメディア出演を続けた天心は、“出る杭”のようになっていた。ゆえにアンチからの「ほれ見たことか」と言わんばかりの壮絶な批判を浴びた。目の当たりにした現実に「肩書を捨てて、自分の名前だけで生きてみろって言いたい」とフラストレーションをこぼしもした。その5か月間に「本当にメンタルが病んで、どうしようもない時もあった」という。
そうした状況でエストラーダと対峙し、「やっぱ不安なものも出てきたりとか、いろんな葛藤って言うんですかね。それはちょっと怖かった」と恐怖心も芽生えた。
負けたらどうしよう――。そんな重圧も重なり、ボロボロになった心を繋ぎ止めたのは、何だったのか。
試合後、天心は「どんだけピンチでも、やっぱ一発当てれば勝てるんだっていうところを、しっかり磨いてきた」という自信がモチベーション維持の鍵となったと証言している。
「やっぱ、人に負けを晒すって怖いじゃないですか。僕は失敗だとは思わないですけど、人前で負けるってやっぱ失敗だと思うし。人前で大恥をかくっていうのは怖いことだと思う。だけど、挑戦してる人とか、日々をしっかりと送ってる人、一生懸命やってる人しかそういうことってできないと思うから。応援してくれてる人に同じことを、もう一回、(負けから)起こすっていうのは、ちょっと本当に嫌だったんで。そういった人のためにも絶対に負けられなかった」
今回の勝利で5月に行われる井上と井岡一翔(志成)の勝者との王座挑戦権を獲得した。「全部のパンチがもっと繋がっていくと、早い段階でチャンスも来る」という葛西トレーナー曰く課題は山積している。チャンピオンベルトを手にするまでの道は、依然として険しい。
それでも、今の天心には、敗北を知った強さがある。ここから「どんどん強くなる」と公言する神童に興味は尽きない。
[取材・文/構成:羽澄凜太郎=ココカラネクスト編集部]
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