「お前、世界は絶対に無理だからな」――苦闘の那須川天心を刺激した陣営の喝 圧倒しながら課題も残した神童に迫る“審判の日”
「自分の中のボクシングの型が完成しつつあるなっていうのが。やるべきこと、手段が分かったというのがある」
前回のモロニー戦後にそう自信を口にした那須川は、不気味なシングルランカーにも勝ち切った。相手のパンチを見切りながら、手数を多く繰り出し、意地でも仕留めに強打を打ちに出る姿に、ボクシング開始当初の戸惑いは見られない。
打たれ強さも身に着け、よりボクサーらしくなった。ただ……、この日も主導権を掌握しながら相手は倒せなかった。モロニー戦から続く課題が浮かび上がり、7回終了時にはセコンドから「お前、やれんのか?」「気持ちが入ってねぇんだよ」「世界は絶対に無理だからな。練習の半分も出てないぞ!」と発破をかけられた。そうした自陣営から飛んだ厳しい喝も、特大のポテンシャルに対する期待の表れと言えよう。
才覚を随所で示した。それでも「ただのチャンピオンを目指しているわけじゃない」と語る男に求められるのは、やはりKO。そうした周囲の空気も理解する当人は、試合後のマイクで「ここまで上手くいかないかぁって感じ。これが自分の実力なんで。まだ課題はいっぱいありますね。また日々、一歩一歩生きていきたいなと思います」と吐露。それでも「僕は何があっても負けないので。強い選手たちを倒していきたい」と前を向いた。
まだまだ課題はある。それでも「ボクシングに真摯に向き合いたい」と語った那須川だけに、一部でWBO同級王者・武居由樹(大橋)が有力視されている今秋の世界戦への希望も膨らむばかり。その一戦は間違いなく神童の未来を占う“審判の日”となるはずである。
[取材・文/構成:羽澄凜太郎=ココカラネクスト編集部]
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