「那須川天心二世」と呼ばれた男の挫折と野望 「どん底」を抜けた田丸辰が見据える未来とは
ーー心身共に問題があった?
ボルトが入っていたので、そのあとにも手術したんです。確かに、そんなに左は出せなかったですね。政所戦は一度勝ってる相手に負けたんで……今その当時のことを考えると、気持ちが甘かったというか、当時の自分は本気でやっているつもりだったんですけど、試合前の追い込み期間中や、試合へ向けての意気込み、懸ける思いみたいなのは全然足りてなかったなと思います。
ーーそんな経験を経て迎えた2022年4月の空龍戦です。試合は思わぬ展開でした。
バッティングで鼻が折れちゃいましたからね。左でカウンターを打とうとしたらバッティングを受けちゃって。あの時は、めちゃくちゃ試合にかけていたんです。僕は16歳からずっとチャンピオンで無敗でやってきて、そこから落ちるとこまで落ちたと思っていたんです。ベルトを取られて、政所にも負けた。それで次に与えられた相手が空龍で一階級下の選手だった。だから、ここで負けたら本当にやばいなというか、負けたら格闘技の最前線で戦っていくのは厳しくなってくるなと感じたんです。リアルに格闘技を辞めようぐらいの気持ちでした。
それでめちゃくちゃ練習して、左の拳も試合でしっかり出せるように出稽古に行ったり、ジムでスパーリングやったりで、週に2、3回スパーをするようにしていました。試合で空龍の対策もめちゃくちゃして、左のカウンターを合わせるっていう作戦もありました。
でも、バッティングをもらって試合が終わっちゃった。何て言うんだろう。その当時人生で一番かけていた試合というか、準備をし続けた試合だったんで、それが勝敗も付かないノーコンテストという形に終わっちゃったんで、一旦絶望してましたね。でも、ノーコンテストだったので負けでもないし、もう一度再戦があるからとも思っていました。
ーーそして鼻が治って8月にいざ再戦というところで、今度は空龍選手がコロナで試合が流れてしまいます。
あの時もきつかったですね。51・5キロはやっぱり減量がめっちゃきついし、節制してやってるのに、1週間前に試合がなくなった。だから、「誰でもいい、体重53キロでもいいんで試合相手を見つけてください」と言ったんですけど、結局見つからなくて、それがもう僕の人生のどん底ですよね。
ーーそこから立ち直って去年の数島戦から3連勝。もう完全復活と言えますね。田丸選手は「天心二世」ではなく「田丸辰」として覚えてもらいたいと試合後のインタビューで言っていました。今後はどんな「田丸辰」を見せていきたいですか?
まずは結果を残し続けること。結果が出なかった政所戦や空龍戦は誰も知らないと思うし、見てももらえないと思うから、まず見てもらえるようにしたいですね。そのためにも、次の世界トーナメントで優勝することが今の自分がやるべきことだと思っています。
それに格闘技以外の露出も増やしていきたいし、自分のファイトスタイルも見てほしい。誰にも真似できないと思うので、そういう部分を出していきたいですね。
ーーファイトスタイルを具体的に言うと?
相手に攻撃を当てさせずに自分だけ当てる。風音戦も、たぶん自分は一発ももらっていない。そういう当たらないスピードですね。攻撃でもディフェンスでも、スピードは誰にも負ける気はしない。KOっていう面ではこれからまだノビシロがあると思うので、そこも伸ばしたい。格闘技を知らない人が見ても、天才的な動きというか、才能あるんだなみたいな感じで思ってもらえるような試合をしたいと思っています。
今年はRISEの世界トーナメントが決まっているので、今はそこで見せたいと思っています。出場する8人が誰かは決まってないけど、僕が出ることは確定してます。そこで優勝することと、今年中に今年はおそらく7月、9月、11月とトーナメントがあるから、12月あたりにRIZINか、武尊さんが格闘技のオリンピックみたいなのをやりたいと言っていたので、そういう大会とか、みんなが注目するような大会に出ていきたいと思ってます。世界のトーナメントで優勝したら、日本の代表として胸張れると思うんで、まずは次の大会で勝ちますよ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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