【独占インタビュー:和田毅①】王貞治会長が激怒した「逆球事件」 勝利への執念を叩き込まれた若き日のエピソードとは
田中 王会長とは強いダイエーホークスを作った歴史がありますし、川崎宗則さんや斉藤和巳さんに聞いても、王会長はすごく厳しい方だったと。 ミーティングで一人残されたり、 ベンチでカーブを投げる格好をし始めたら機嫌が変わってきたとか。王会長とのエピソードはありますか?
和田 顔スレスレの距離で怒られたことがある。自分は結構、コントロールがいいと言われているけど、逆玉がめちゃめちゃ多かった。城島(健司)さんからは「逆球王」と呼ばれるくらい。「(新垣)渚は暴投が多くてコントロールが悪いと思われているけど、実は和田の方が悪い」と言われたりね。それで、プロ2年目だったかな。7イニング投げて5失点ぐらいした試合があった。失点はことごとく逆球が打たれたもので……。しかも、その試合だけじゃなくて、何試合か逆球を痛打されていたんで、王会長の頭にインプットされていたんでしょうね。交代した時に「おい和田!ちょっと来い!」「いつになったら逆球が直るんだ!」 と怒られました。
田中 みんなの前で?
和田 いや、ベンチ裏に一人で呼ばれて。会長はみんなの前ではそういうことはしない。ベンチ裏には何人かスタッフさんがいたけど、その時にピッチングコーチの尾花(高夫)さんもいたから慰めてくれた。王会長は、ユニフォームを着ている時は勝負にフォーカスしているから、「あいつのために言わなきゃいけない」といった形で怒ってくれる。負けが大嫌いで、 全部勝ちたい方だから。
でも、試合が終わった後は切り替えがすごい。その日も僕自身は怒られたから囲み取材の時にも落ち込んでいたんだけど、そこを通った私服の王会長が「お疲れ、次頑張れよ」と声をかけてくれた。あんな剣幕で怒っていたのに言葉をかけてくれたから、「次は絶対に頑張ろう」と思った。いろんな人が王会長のために、王監督のために勝ちたいっていうのを自分も感じさせてもらった瞬間だった。
田中 怒られたのは、その1回ぐらい?
和田 本気で怒られたのはその1回だけかな。 本当に負けるのが嫌いな方だから機嫌が悪くなる時はあったけどね。会長はホームランが大好きだけど、ホームランを打たれるのは大嫌い。自分は結構ホームランを打たれやすかったから……。 何本か打たれてしまうと、監督の前は通りづらかった。
田中 他には誰が怒られていた?
和田 ピッチャーより野手の方が怒られてるイメージがある。でも、会長はみんながいる前で怒っているイメージはあまりない。当時は先発投手も、投げない先発投手も、全員が試合終了まで残っていた。それで連敗すると、必ずミーティングがあったり。
田中 2連敗以上でミーティング?
和田 そう。2連敗以上すると必ずミーティング。10秒、15秒ぐらいの会長の言葉があって、それから「おつかれ」といって帰る形だった。会長が起こった場面で印象に残っているのは、杉内(俊哉)が3年目の時。杉内が打たれてベンチを殴って両手を骨折した時に、全員を集めて「プロ野球選手にとって大事な商売道具にああいうことするのは、絶対許さん」とみんなの前で言った。当然、その前後で杉内を個人的に呼んで怒ったんだろうけど、それは僕らには絶対に見せなかった。全員を集めて「絶対するな」と、すごい険しい顔でみんなに伝えていたのはすごく印象に残っている。
田中 やっぱり唯一無二の存在ですよね。
【第2回に続く】
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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