「“穴”のない者同士のハイレベルな戦い」エドワーズvsウスマン、因縁のダイレクトリマッチの見どころは?【UFC286】

タグ: , , , , , 2023/3/16

(写真左より)レオン・エドワーズ、カマル・ウスマン/Getty Images

 日本時間の3月19日、イギリス・ロンドンのO2アリーナで『UFC286』が行われる。メインイベントはウェルター級新王者レオン・エドワーズが地元ロンドンで、前王者カマル・ウスマンを迎え撃つ因縁のダイレクトリマッチ。この一戦の見どころを“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。

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(C)Getty Images

――『UFC286』のメインはエドワーズvsウスマンのウェルター級王座を賭けたダイレクトリマッチ。前回は昨年8月、絶対王者だったウスマンが最終5ラウンド残り時間1分を切ったところで、エドワーズの左ハイキックを食らって初のKO負けという大番狂わせでしたね。
「そうでしたね。なので今回、自分も“なぜ、ああいう結果になったのか”という要因を見つけるために、前回の試合をあらためてじっくり見直してみたんですよ。そうしたら、いろいろと自分の中で見つかったことがあって、これを頭に入れてもう一度前回の試合を見直すと、相当おもしろいと思います」

――どんなことが見つかったんですか?
「ウスマンっていうのは、大学時代にNCAAディヴィジョン2のオールアメリカンに3度選ばれて全米優勝もしているので、レスリングの攻防にめっぽう強いことはみんなわかってると思うんです。けれど、こと四つ組に関しては、エドワーズがウスマンの上を行ってたなと思ったんです」

――そうなんですか!?
「1ラウンド目にウスマンがテイクダウンされたじゃないですか。自分はあれがすごく気になってたんですよ。“なんであんなに簡単に倒されたのかな”って。ウスマンがテイクダウンされたのは、あれが初めてだったんですよね」

――それまでウスマンは、UFCで負けたことがないだけじゃなく、寝かされたこともない。テイクダウンディフェンス率100%だったんですよね。
「しかも粘って粘って寝かされたわけじゃなくて、小外刈りでスコーンと倒されて一気にマウントまで奪われたので。“これはタイミングが良かったのか、ウスマンが気を抜いてたのかな?”って思ってたんです。でもあらためて見返したら、あれはエドワーズの四つ組が相当強いからこそ起こったことだったんです。自分もWOWOWの生放送中に気づけばよかったんですけど、テイクダウンの印象が強烈すぎて、その前の攻防が頭から飛んじゃってたんですよね」

――テイクダウンがうまくいったのは、単に小外掛けが決まっただけじゃなくて、その前に伏線があったと。
「初っ端の1ラウンド1分20秒すぎに、ウスマンがジャブからタックルにつないでケージに押し込むことに成功したんですけど、その後、エドワーズは差し合いで四つに戻して、オクタゴンの中央まで逆にウスマンを押し戻してるんですよ。そこでウスマンが“あれっ!? やべえな”って感じになったところで、外掛けで倒してたんです」

——本来、ケージレスリングや組んでからの攻防はウスマンが得意としているだけに、差し返されたことで逆に倒される要因になったしまった、と。
「ケージにしっかり押し込んでからはウスマンのほうが圧倒的に上なんですけど、四つに戻す動きや四つ組の展開はエドワーズが上回っていた。おそらくウスマンサイドも、1ラウンドの攻防で“エドワーズの四つ組はちょっと面倒だぞ”ということがたぶんわかって、その後、少し戦い方が変わったんですよ。
 例えばスタンドの打撃の攻防で距離が近くなって、エドワーズが組みにいこうとすると、ウスマンはそれをすごく嫌がって離れたりするシーンが何回かあったんです。エドワーズは組み際、離れ際のヒジ打ちが得意なので、ウスマンはそれを嫌がってるのかなと思ったんですけど、映像を見返すと“おそらく四つ組になるのが、倒される危険性があって嫌なんだろうな”ということに気づいたんです。結局、1ラウンド以降、エドワーズはテイクダウンを奪えてないので、ちょっと見た目では分かりづらいんですけど。それはウスマンが組まれることを相当警戒していたからだと思うんですよね」

——観てる方には“組んでの攻防になればウスマン圧倒的に有利”という先入観があったから、なかなかそこに気づきにくかったわけですね。
「今までの強い状態のウスマンっていうのは、ジャブで距離を制して、近づいたらケージレスリングで削っていって、相手が“こいつ相手にどうすりゃいいんだ?”っていう感じでなす術なしという状態にされて、完勝するパターンが多かったと思うんです。けれどエドワーズに対しては、ウスマンのほうが四つ組の展開を嫌がっていたから、そこまで盤石の展開にできなかったんじゃないかと思いますね」

――最終5ラウンドで、ウスマンが左ハイキックをもらってしまったのもそれが影響していたと思いますか?
「おそらく影響していたと思います。スタンドの打撃に関しては、ウスマンのジャブがすごく有効で、エドワーズはなかなか自分のパンチの距離にさせてもらえなかった。ただ、左の蹴りはボディや狙った腕にヒットしてるんですよね。だからエドワーズは“近づいてパンチを入れるのは難しいけど、蹴りは当たるな”っていうイメージを持ちながら試合が進んでいったと思うんですよ。一方でウスマンの方は、“ケージ際で倒してしっかり上を取れればいいけど、四つ組になるのは面倒だな”という感じで、お互い少しうまくいかない部分がありながら、最終の第5ラウンドを迎えたと思うんですね」

――ウスマン側に立って考えれば、4ラウンドまでおそらくポイントでリードしていたので、最後の5ラウンドは“スタンドで自分の距離を保てば判定で勝てる”という思いがあったのかもしれないですね。
「それもあってか最後までスタンドではウスマンの距離だったんですよ。だから、エドワーズは左ストレートから左ハイキックのコンビネーションで倒しましたけど、あれは“パンチが当たらない距離だな”と理解した上で、左ストレートはあくまで目くらましで出して、ウスマンの頭を動かして左ハイキックを入れた。あれはエドワーズが“この攻撃なら当たる”という感覚をつかんだからこそ、出せた一撃だと思いますね」

――5ラウンドまでの攻防の積み重ねでその感覚をつかんだ、と。
「おそらくあのコンビネーションを途中で出していても防がれていたと思うんです。でも5ラウンド目だからこそ、ウスマンのほうにも“この距離ならパンチは当たらない”“あとは下手に組まれずに、蹴りに関しても致命傷になるようなものをもらわなければ勝てる”という気持ちが生まれたことで、言ってしまえばベーシックなフェイントに引っ掛かってしまったんだろうな、と」

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