【大学ラグビー】決勝に駒を進めた早稲田と帝京 準決勝で見えたそれぞれの強み・弱みは?

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 しかし、帝京もまた、元々の強みである接点でのコンテストとフィジカルの強さを向上させていた。ほんのちょっとしたスキをついてトライを取り切り、結果的には明治に一度もリードを許さなかった。自分たちの強みを理解し、苦しい時には焦ることなくその強みを最大限に活かす。過去には9年連続の大学日本一の座に輝き、現在また3連覇中と勝利を積み重ねる中で培われたウイニングカルチャーのなせる業だろう。

 明治は終了間際に、SOとして先発出場し、途中からCTBに下がった伊藤龍之介がトライにつなげる奔放なランを見せた。結果論にはなってしまうが、もう少し早い時間帯に1年生SO萩井を投入し、伊藤を自由に走らせていたら、別な結果になっていたかもしれない。来季の明治のBKのラインアップを予想するのは難しいが、楽しい作業になりそうだ。

 第2試合は、春季大会で帝京に7-60と大敗して以降は危なげなく勝ち進んできた早稲田と、関西リーグでは終盤に2連敗は喫してきたものの、大学一と言われる苛烈な練習で鍛え上げてきた京産の激突。昨年の大学選手権では準々決勝で対戦し65-28の大差で京産が勝利している。早稲田にとってはそのリベンジマッチであり、京産にとっては過去10度挑んでどうしても突破できなかった「ベスト4の壁」をぶち破るための戦いだ。強力なスクラムと強烈な突破力を持つ留学生3人を擁する京産のパワーを、試合巧者の早稲田がいかにいなすか、という展開が予想された。

 前半は完全に早稲田ペース。組み合う前の駆け引きの段階から優位に立ち、スクラムにこだわりのある京産に単純な力比べとなるスクラムを1回しか組ませず、3回反則を奪った。ただし、力比べに持ち込まれた1回は京産が完全に押し勝って早稲田のフロントロー陣を文字通り押し潰した。

 しかし、京産にとってのモメンタムとなるこのスクラム以降の勢いを持続させないのが早稲田の巧みなところ。留学生の突進は、きっちりとダブルタックルで止め、しかもタックラーは素早いリロードでディフェンスラインに穴を開けることがなかった。前半は京産に得点を許さず26-0で折り返す。

 後半も開始早々にトライを追加し、31-0と楽勝ムードが漂う。だが、試合はここから膠着し、次第に京産に流れが傾いていく。ダブルタックルと素早いリロードは持続してはいたものの、早稲田はそこから反撃することができない。京産は一発で大幅なゲインができる走力のある選手は少ないが、小刻みにゲインできる選手は多い。ゴール前までキックで迫り、ラインアウトからモールを組み、最後はゴールラインまで飽くなきピック&ゴーを繰り返すという、泥臭いが力強い戦法を徹底し、終了までに3トライを奪った。この戦法の徹底が、せめてあと5分早かったら勝負はどう転んでいたかわからない。早稲田は最後の最後で思わぬ綻びを見せてしまった。

 決勝は4連覇を目指す帝京と、2019年以来となる通算17度目の優勝を目指す早稲田との対戦となった。この両者は今シーズン3度対戦しており、春季大会は先述の通り60-7の大差で帝京が勝利しているが、夏合宿では38-14、対抗戦では48-17で早稲田が勝利している。

 特に直近の対戦となる対抗戦は、WTB田中健想が5トライを挙げたのを始め、佐藤健次や服部亮太、矢崎由高などのタレントたちの躍動ばかりが目立つ早稲田の圧勝だった。しかしながら、徹底したフィジカル勝負に持ち込まれると防ぎきれない場面があるということも、京産との試合で改めて露呈してしまった。帝京にはフィジカル勝負に持ち込む人材も技術も揃っている。早稲田が多彩なタレントの能力を遺憾無く発揮して、対抗戦での圧勝を再現させるのか、それとも帝京が早稲田の弱点を徹底的に突いてリベンジを果たすのか。両雄の激突からは目が離せない。





[文:江良与一]

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