男子バレーはなぜ強くなったのか?10年前にスタートした日本代表強化の「舞台裏」
石川祐希を軸としたチームは、世界の強豪と互角以上に渡り合う力をつけた(C)Getty Images
男子バレー日本代表が絶好調だ。現在開催中のネーションズリーグでは、開幕から9連勝(7月6日現在)と参加16チーム中、唯一の全勝を飾り首位を走る。予選ラウンドを3試合残し、ファイナルラウンド進出を決め、残るオランダ、イタリア、ポーランドとの結果によって19日から始まるファイナルラウンド、準々決勝の対戦国が決まる。
なぜこれほど強いのか。もちろん急に強くなったわけではない。
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2021年の東京五輪でも29年ぶりにベスト8進出を果たし、昨夏の世界選手権も東京五輪で金メダルを獲得したフランスにフルセットの末、惜しくも敗れた。2008年の北京五輪から、ロンドン、リオデジャネイロと五輪出場から遠ざかり、世界でもなかなか勝てずにいた頃は「かなうわけがない」と思っていた相手にも堂々渡り合い、もしかしたら勝てるのではないか、とどんな相手にも希望を抱かせる。
事実、ネーションズリーグでは30年ぶりにブラジルから勝ち星を挙げたのも何よりの証だ。
では強さの背景は何か。第一に挙げられるのは継続性だ。今に続く強化は10年前の2014年からスタートした。
ロンドン五輪の出場権を逃した2013年、日本代表は史上初となる外国人指導者としてゲーリー・サトウ氏を監督に招聘した。2月に就任が発表されたものの、自チームの強化に向けた選手選考などサトウ元監督が着手する時間はなく、いわばぶっつけ本番の状態でシーズンに突入。ネーションズリーグの前身となるワールドリーグは18チーム中18位、世界選手権の出場権を逸したことや、ワールドグランドチャンピオンズカップで最下位という成績を受け、わずか1年で解任された。
新たな手を打ったにも関わらず、あっけなく終わる。この危機的事態でもあった翌年の2014年に新監督へ就任したのが現在日本代表の強化委員長を務める南部正司氏だ。前年の2013年に7年後の2020年東京五輪開催が決定していたこともあり、南部氏は将来を見据え大型選手や若手選手を積極的に選出し、並行して人気回復にも着手した。
そこで抜擢され、脚光を浴びたのが、当時現役大学生だった石川祐希、柳田将洋、山内晶大、髙橋健太郎の4選手だった。これまでも「バレー人気復活のためには人気選手をつくるべき」と同様の取り組みが為されてきた印象の強いバレーボール界ではあるが、アウトサイドヒッターの石川、柳田はスピードだけでなくパスが乱れた状況からの高いトスを打つ能力にも長けていた。当時はまだ粗削りだったミドルブロッカーの山内、髙橋も経験を重ねるうちにブロック、スパイク力を磨き、ただ大きいだけの選手ではなく、世界と渡り合うミドルブロッカーへと成長を遂げている。すべては2014年の大抜擢からスタートした挑戦だった。
2016年のリオデジャネイロ五輪は逃したが、新たな分岐点を迎えたのが同年10月。中垣内祐一氏が新監督に就任し、コーチとしてフランス代表やポーランド代表を率いたフィリップ・ブラン氏を招聘した。