ストレスを乗り越える仕事術vol.3 DeNA・山﨑康晃

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大きなストレスと向き合う守護神


 最もストレスと向き合う役回りかもしれない。山﨑康晃投手は新人から3年連続守護神を務めて2017年シーズン終了時点で96セーブをマーク。野球は9回の3つのアウトを取るのが最も難しいといわれている。リードしている最終回に登板する緊張感は計り知れない。失敗した時は戦犯としてバッシングを受けることもある。「緊張は当然しますよ。3年もやっていればいい試合もあるし悪い試合もある。時には体調を崩したり、病気になったこともある。でも苦労した分だけ達成感も大きい。ストレスがなければ良い成績も残せないと思います」と語った。

試合で味わった屈辱は試合で取り返す。

 
 普段の山﨑は笑顔を絶やさない好青年だ。「明るい気持ちの持ち方は母親(べリアさん)の影響が大きいです。暗いことを考えてマイナスになると空回りする。明るいのは僕自身の性格ですね」と大きい目を輝かせる。生まれ育った環境に起因したプラス思考。だが、セーブ機会に失敗すれば当然精神的なダメージは大きい。「僕だって引きずりますよ」とポツリと漏らした。「家の中で音楽を聴いたり、ドライブをしたり気をまぎらわすことはしてきた。他にもレゴを作ったりプラモデルを作ったり。(失敗が続いた時は)実家に帰る頻度が増えます。家族に話したり、幼馴染に話したりするとだいぶ楽になる」。球界を代表するリリーフエースも繊細な心を持つ24歳の青年だ。押しつぶれそうなストレスに向き合ってきた中でたどり着いた答えがあった。「結局次の試合を抑えることでストレスや不安は一番消えるんですよね」。辛いが逃げるわけにはいかない。尊敬する先輩たちの助言が大きかった。共にプレーした元DeNAベイスターズの三浦大輔氏に「やられたらやり返せ。おれはそれを25年間やっていた」と言われた。「ハマの大魔神」として抑えで長年活躍した元横浜ベイスターズの佐々木主浩氏に「(マウンドに上がるのが)怖くないですか?」と聞いた時に返ってきた言葉に重みを感じたという。「怖いよ。怖くなきゃダメだよ」。絶対的守護神だった佐々木もストレスや重圧と戦って結果を残してきた。その事実は大きな励みにもなった。

野球人生の分岐点

 
 昨年は野球人生で大きな試練を味わった。開幕してから、数試合救援失敗が続くと、ラミレス監督から7、8回を投げるセットアッパーへの配置転換を言い渡された。「もう一度抑えに戻りたい」。抑えをはく奪されたショックは大きかったが、再びはい上がった。「どこが悪かったか原因を色々考えて。でも結局気持ちなんですよね。技術的な部分はほとんど何も変えていない。相手の打者に対する気持ちが整理できました。精神的な部分ですね」。セットアッパーで15試合連続無失点と結果を出し、5月下旬に抑えに復帰。2017年シーズンは4勝2敗26セーブ15ホールド、防御率1.64の好成績を残して、CS進出、そしてCSを勝ち上がり、日本シリーズ進出の立役者になった。「昨年は抑えの剥奪がなかったら1年間持たなかったっと思う。代わりに抑えを務めたパットンに触発されていい刺激になった。昨年は(入団以来)3年連続30セーブの記録がかかっていたけど達成できなかった。でもそれ以上のものを得たシーズンだったと思う」と言葉に力を込めた。

理想の守護神像

 
 クライマックス・シリーズを勝ち抜き、19年ぶりに出場した日本シリーズではソフトバンクの守護神・サファテから大きな刺激を受けた。練習中に雑談した際は「肩、肘が痛いよ。おじさんだから」と笑っていたが、マウンドに立つと圧倒的な存在感だった。「(日本一を決めた6戦目で)3イニングを投げた時も(首脳陣に続投を)直訴していったと報道で見て凄いなと。そこが僕との力の差なのかなと痛感した。生身で見られた刺激は大きい。あのような投手になりたい」と思いを新たにした。野球人生で大きな目標がある。「人の記憶に残るような伝説を作りたい。こんな凄い投手がいたんだって。だから自分の成績には満足していないです。僕ももう4年目を迎えてお客さんじゃない。チームを引っ張っていく立場なので。不動の守護神になりたいです」。最後に登板時の登場曲「Kernkraft 400」に合わせて観客が総立ちしてジャンプする「康晃ジャンプ」について聞いた。「年々盛り上がりが凄くなっている。大きな武器だと思います。相手にプレッシャーやストレスを掛けられるし、僕も失敗するわけにはいかない。良い意味で力になっています」。目を輝かせて満面の笑みだった。

■編集部からのお知らせ
3月7日に発売の雑誌「CoCoKARAnext」では読売ジャイアンツ・菅野智之投手のインタビューの他、プロ野球選手に学ぶ仕事術などストレスフルな時期を乗り越える情報を掲載。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

山﨑 康晃(やまさき・やすあき)

1992年10月2日、東京都荒川区生まれの25歳。
帝京高では2度の甲子園出場。亜大では4年春にオール完投勝利でリーグ最多の5勝を挙げてMVPに輝くなど東都大学リーグ通算15勝6敗、防御率1.95。14年ドラフト1巡目で横浜DeNAベイスターズに入団。新人の15年には開幕直前に抑えに抜擢されると新人記録となる37セーブで新人王を獲得した。16年も33セーブを挙げて新人初の2年連続30セーブ以上を達成。17年は自身最多の68試合に登板。通算成績は185試合で8勝11敗96セーブ29ホールド、防御率2・35。178センチ、85キロ。右投右打。

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