【現地発】限界の先へ――山本由伸が見つけた「新しい自分」とさらなる進化 日本人初のサイ・ヤング賞は射程圏内に
10月25日、ブルージェイズとのWS第2戦で完投し、中1日で第3戦の延長18回からブルペン入りで準備を行っていた。サヨナラ勝ちで登板機会はなかったが、先発登板の時と同じような状態に仕上がっていたという。山本は試合後、笑顔で振り返った。
「こういう試合で投げられるように何年も練習してきたので。19歳のときは1軍でなんでもない試合で投げても、そこから10日間くらい投げられなかったり、そんな感じだったんですけど、ワールドシリーズで完投して2日後に投げられるような身体になってたっていうのはすごく成長を感じましたし、やっぱり矢田修という男がどれだけすごいか、証明できたんじゃないかなって思います」
2連覇を成し遂げたWS後、矢田氏はほおを緩ませながら、山本の強みについて明かした。「純粋で素直。これはもう一番です」。シーズン終盤、己の道を信じて独自のトレーニングを継続できた理由について、心境を語った山本の言葉とつながった。「結果を出したいとか、そういう欲じゃなくて、ただただよくなりたい。もっともっと純粋な気持ちのところでやろうと思えたから頑張れた。今もまだ、途中ですけどね」。
メジャー2年目のレギュラーシーズンとポストシーズンの成績を合計すると、投球イニング211回で17勝9敗、防御率2.30。主戦投手として投げ続け、来春3月はWBCでもエースとしての活躍が期待される。そしてすぐに、3連覇を目指して3年目のシーズンが開幕する。球団は故障のリスクに対して慎重な姿勢だが、向上心あふれる山本はさらに強くなり、乗り越える――。その先に、日本人初のサイ・ヤング賞の栄誉が待っている。
[文:斎藤庸裕]
【著者プロフィール】
ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平~偉業への軌跡~【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。
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