高卒当時から「自分の世界観」を持っていた山本由伸がもたらすイノベーション
進化を止めない山本。彼が起こすイノベーションは球界に大きなうねりをもたらしている(C)Getty Images
今から5年前、オリックスのエースとしてチームを率いてきた金子千尋がこんなことを言っていたのを思い出した。
「大貴さん、なかなか面白い子が投手陣にいます。確か…まだ高卒2年目ですが、調整法や投球のメカニズムがユニークです。自分の世界観を持っている。はまれば大成すると思いますよ」
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金子千尋は怪我の影響もあり、二軍で調整を行う中で若手投手らを見た際に彼の印象に残ったのが当時の山本由伸だった。
投手としての調整方法が独特であり、投球メカニズムがユニークであるというキーワードが非常に気になり、一軍だけでなく二軍施設にも取材に行かせてもらった。そこで山本由伸はというと、外野の芝の上でプラスティック製だろうか槍のようなものを使ってピッチングフォームの調整を行っていた。これまでアメリカンフットボールのボールやバドミントンのラケットなどを投手練習に持ち込んでいるのは見たことがあったが槍投げの槍というのは私自身初めてで印象的だったことを覚えている。
「身体を横に使うというイメージはほとんどありません。前ですね。キャッチャーのミットに向かって自分の左足、左膝、左肩、左肘、左手の中指…これが全て投げる方向に一直線になることをイメージしています。ボールを持つ右腕も後ろにまっすぐ上げるイメージですかね。槍投げの投法をヒントにしました。あれだけの長さのあるものを遠くに強く投げられる原理を参考にしました」
当時、話を聞かせてもらった時が20歳から21歳になる頃。”身体を縦に使う、まっすぐ前に、身体を直線的に使う“。若き山本由伸は独特の理論と世界観を持っていた。
「前足はテコの原理だと思っています。前足が地面に着いた時、伸びているからこそ、その反動で身体が前に押し出される感覚です。キャッチャー方向への推進力がつきます。まさにテコの原理です」