衝撃だった“電撃引退”の舞台裏…イブラヒモビッチはなぜ去るのか「今日は雨が降っていた。『神様も悲しんでいるんだな』と」

タグ: , 2023/6/5

 無論、“誰も知らなかった”孤高のカリスマの幕引きは、イタリア・メディアでも大きな衝撃となった。

 ミラノに拠点を置く日刊紙『Corriere della Sera』は「『サッカーに別れを告げる時が来た」とズラタンは言ったとき、ただミランとの別れになると予想していたサン・シーロを驚かせた』」と電撃引退の瞬間を回想。そのうえで「このスウェーデン人は、別の場所でキャリアを続けることもしない。ミランに別れを告げただけではなく、もう2度とプレーしないのだ」と強調した。

 また、イタリア大手紙『Gazzetta dello Sport』は「“GOD”bye」(さようならとイブラヒモビッチの愛称でもある『神』をかけた言葉)という言葉とともに、「過去何か月もの間、『(現役を)続けたい』と口にしてきたズラタンは突然、別れを切り出した。その言葉にサン・シーロは溢れる涙を止めることはできなかった。歴史的なアイドルであり、ロッソネーリ(赤と黒の意)のシャツを着て2度のイタリアチャンピオンとなった、特別なリーダーの言葉に、だ」と、カリスマへの賞賛を綴った。

 指揮官は、絶対的なリーダーシップを発揮しながら、去りゆくベテランへの感謝を口にした。試合後の会見でステーファノ・ピオーリは、「ズラタンはピッチ内外で多くのことを助けてくれた。彼は私にとっての柱だった」と言葉を紡いだ。

「信じられないほどのメンタリティーを持ち、月曜日から日曜日まで勝者であり、我々のような若いグループが多くのことを理解するのを助けてくれた。彼は偉大なチャンピオンであることを証明してくれただけでなく、私がよく接してきた人物であり、ある種の環境に適した性格の持ち主でもあることも示してくれたんだ」

 重度の怪我をしてても、指揮官から揺るぎない信頼を得ていた。そんな重鎮はエモーショナルだった最後の会見でも“らしい”言葉を残している。

「(イブラヒモビッチになれる選手は現れるか?)無理だよ。不可能だね。ズラタンは唯一無二だ。これは俺のエゴから来る発言ではない。俺たちは皆がそれぞれ違うからだ。俺は若い頃にファン・バステンと比較されたが彼は彼であり、俺は俺だ。似たような部分があっても比較するのはフェアじゃない。もう1人のズラタンがいるなんて思わない」

 我が強すぎるがゆえに「独善的」と揶揄されもしたイブラヒモビッチ。しかし、図抜けたパーソナリティーと類まれなスキルがあるからこそ、彼は観る者を魅了したのだ。





[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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