【医師に相談】胸郭出口症候群とはどのような病気ですか?

タグ: , 2024/8/1

Q:胸郭出口症候群かどうかを、自分でチェックできる方法はありますか?

特定の動作や姿勢をとることで問題になっている症状が生じるかどうか確かめる「誘発テスト」というものがあり、ご自身でチェックすることにも用いることができます。
(ただし、正しく行なえているかどうかの保証はないため、自己診断だけでなく専門の医療機関で診てもらうことが望ましいです。)

胸郭出口症候群の誘発テストとして腕神経叢の過敏さを評価するモーレーテストとルーステストがあります。

■モーレーテスト・・・
鎖骨の上のくぼんでいる部分を指で叩くと、腕の方にしびれが走ったり、同部位を押すと痛みがあるかを調べます。手指まで痛む3+、上腕まで痛む2+、局所の圧痛のみ1+などでスコアとします。スコアが高いほど胸郭出口症候群の可能性が高まります。

■ルーステスト・・・
胸をはって肩を挙上し、肩関節を外転90度、外旋90度、肘も90度屈曲の姿勢を保持して、この状態で手を開閉(グーパー)させます。この動作を継続する間にしびれが出たりだるくなったり、やめると症状が回復する場合は、胸郭出口症候群の可能性が高くなります。

しかし上記2つのテストも万能なものではなく、他の原因で生じている手のしびれや腕の痛みでも陽性となることがあるため注意が必要です。

また、最近では胸郭出口症候群と間違えて診断されたものの、真の原因は他の部位にあるという報告も多くみられるようになっています。

Q:胸郭出口症候群を解消するストレッチはありますか?

頸部筋群の柔軟性を保つことで、胸郭出口症候群の原因とされる神経がしめつけられることや引っ張られることを防ぐことができます。

■1.頸部筋群のストレッチ
痛みのある側の鎖骨の下に反対側の手を置き、胸の部分を軽く固定します。痛みのない側へ首を横に倒し、顎を上に向けます。そうすると、首の筋肉が伸びて張ってくると思います。伸びて気持ちいいという程度のところで止めて15秒伸ばします。

痛みのある側の鎖骨の下に反対側の手を置き、胸の部分を軽く固定します。

痛みのない側へ首を横に倒します。

首を横に倒したまま、あごを上に向けます。伸びて気持ちいいという程度のところで止めて15秒間伸ばします。

■2.背中~脇腹のストレッチ
椅子に座ります。片側の手を反対側の膝に置きます。その手を膝からゆっくりとふくらはぎの外側に伸ばすように体を斜め前に倒していきます。この時、目線は足のつま先を見るようにします。そうすると、脇腹が伸びてくると思います。伸びて気持ちいいという程度のところで止めて15秒伸ばします。

椅子に座ります。片側の手を反対側の膝に置きます。

膝に置いた手をゆっくりとふくらはぎの外側に伸ばすように体を斜め前に倒していきます。この時の目線はつま先へ向けます。伸びて気持ちいいという程度のところで止めて15秒間伸ばします。

Q:胸郭出口症候群になりました。完治するまでにどれくらいかかりますか?

完治までの期間は手術が必要な状況か否かによっても異なります。

軽症の場合は、手術には至らずに保存的治療で改善します。原因となる動作やスポーツを休むこと、数回の注射、内服薬などで改善し、期間としては2か月から3か月ほどが一般的です。

手術をして完治を目指す場合は、入院期間、その後のリハビリ期間、仕事やスポーツへの復帰のための期間が必要になります。このため、トータルでは手術を受けたから数か月から1年ほどが目安となります。

Q:胸郭出口症候群になりました。寝る時の注意点はありますか?

腕が重力で引っ張られないように横向きに寝る時は抱き枕を使用すると、腕の重みを支えてくれるので症状の悪化を防ぐことができます。

また、高すぎる枕は首から肩にかけての筋肉が過剰に緊張状態となりやすいです。頭だけを枕に乗せるのではなく、首の下にできる空間も埋めるようにすると過剰な緊張状態を防ぐことができます。

頭だけを枕に乗せるのではなく、首の下にできる空間も埋めるようにすると過剰な緊張状態を防ぐことができます。

首の下に空間があると、首や肩周りの筋肉が過剰な緊張状態になりやすいです。

腕が重力で引っ張られないように横向きに寝る時は抱き枕を使用すると、腕の重みを支えてくれるので症状の悪化を防ぐことができます。

Q:胸郭出口症候群の治療にはどんなものがありますか?

不良な姿勢を改善させたり、痛みの原因となる運動や労働の中止をしたりといった、生活指導が最初の治療となります。また、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤や神経性の痛みに対する内服薬が処方されることもあります。さらに神経周囲の炎症を緩和するためのブロック注射も行われます。

このような保存的治療で改善しない場合は、手術という選択肢を整形外科の先生に勧められることもあります。手術は第1肋骨を切除する手術や、同時に損傷した血管を別の血管で置き換える手術などが行われます。この手術では、神経を傷つけるリスク、あるいは手術をしても症状が改善しない、再発するなどのリスクがあります。

最近になって、胸郭出口症候群と診断されながらも、実際には手術をしなくても、カテーテル治療という方法で改善されている方が増えてきました。

引用文献:
『今日の整形外科治療指針第8版』
『運動器診療 最新ガイドライン』
『図解 四肢と脊椎の診かた』
Thoracic Outlet Syndrome. Jason Kaplan; Arjun Kanwal. StatPearls





[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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