元ソフトバンク絶対エース・攝津正の「心のマネジメント術」~ルーティンを大切にする~
どんなに活躍し、明るく輝いて見えるアスリートでも、その一方では決して表には表れない苦しみや弱さはあるもの。
「心理カウンセラー×アスリート」の対談により、日々の生活や仕事にも役立つ「心のマネジメント」をひもとく本連載。第3弾となる今回からはソフトバンク時代に5年連続開幕投手を務め、沢村賞にも輝いた攝津正氏と臨床心理士・公認心理師としてこれまで様々な悩みを抱える人をカウンセリングし、解決へ導いてきた心理カウンセラー・塚越友子氏でお届けする。
プロ入り前は感情コントロールが難しかった
塚越 攝津さんといえば現役時代の実績からも、相当「心技体」のバランスが取れているんじゃないかと想像していました。心のマネジメントに関して攝津さんは現役時代、どのくらい重視されていましたか。
攝津 僕は心のマネジメントとかそういうことについてあまり深く考えたことがなくて。どちらかというと、ポジティブなタイプなのかなと思っています。結構短気なほうなので、なるべく感情が表に出ないようにコントロールしようと、ある程度の年齢になってからは意識していましたね。
塚越 意外な回答でした。ピッチャーって、マウンドに上がると1人で背負っているところがあるじゃないですか。そのような重責がある中、具体的にどんな心のコントロールをされていたんですか?
攝津 やっぱり、打たれたら悔しいという気持ちになりますし、そこでカッとなって投げるボールは単純になり、どんどん相手に読まれて打たれるという失敗を若い時、特にプロ入り前は繰り返していました。ある程度野球をやっていて結果が伴わないと『このままじゃ野球が続けられない』という状況になって・・・。心も含めてなんとかしないといけないなという状況になり、そこからですね。どうしたら結果が残せるかと自分と向き合うようになって、なるべく感情を出さないように変えていった感じです。
塚越 そこで具体的にどんな風に感情のマネジメントをされたのですか?
攝津 感情って、一瞬で動くじゃないですか。そこで我に返って一呼吸おくとか、意識としてはそういうことですかね。そうすると、物事に対してあまりなんとも思わないというか『まあ、そのくらいいいか』と受け流せるような考えができるようになったかなと思います。
塚越 実際に試合中に自分の感情に気づいて我に返るという自分なりのプロセスがあったということですね、どんな風に気づいて切り替えていたんでしょうか?
攝津 野球って、プレーでミスがわかるスポーツ。でも周りのミスって、自分ではどうしようもないことなんですよね。なので、そこに意識を持っていくよりも、まずは自分がしっかり与えられた役割をこなそうと優先順位を意識していました。
塚越 プレー中の『周りのミス』と『自分のミス』があって、まず周りのミスはコントロールできないから、そこを放っておけるような自分になろうというところから始める。次に自分のミスはどういうふうに対処されていましたか?
攝津 自分のミスは、元々短気ということもあって、許せないんですよ。そうなると、打たれたあとなんかは結構引きこもりがちではありましたね。
塚越 割と試合後も引きずってしまうタイプだったということでしょうか。
攝津 引きずっていましたし、ずっと『なんで失敗してしまったのか』と映像をみたりとか、どんどん私生活も含め、野球以外のところでも制限をかける感じにはなっていましたね。