「イップス」になりやすい人とは?イチローも経験、克服に掛かった時間は?
イチローもイップスの経験が?
捕手や内野手では、近い距離で正確なコントロールを求められる送球動作時にイップスになるケースが多い。悪送球が続けば、外野手にコンバートされやすい。遠投ではほとんどイップスにならない。内野手で入団した田口壮、内川聖一らはスローイングの不安が少なくなった外野手転向をきっかけにブレークした。
実は、イチローにもイップスの経験があった。16年、テレビ番組のインタビューで、投手から野手転向した理由について語っている。
「僕らの高校時代は1年生がゴミで、2年生が人間、3年生が神様っていう位置付け。ゴミが神様に投げる。先輩たちに投げられなくなり、2年春からイップスになったんです。僕の野球人生で一番のスランプでしたね。投げることって、当時一番自信があったものですからね。オリックス入団5年後の97年まで続きました。日本一(96年)になった時、僕まだイップスでしたから。苦しかったですね〜」
元日本ハム投手の野球評論家、岩本勉氏は
まわりからは簡単に見える近距離のキャッチボールでワンバウンドしたり、ボールが大きくそれて制球できなくなる。プロ選手であれば屈辱的で、致命的欠陥と思ってしまいがち。イップスの自覚があっても、わざわざ公表する現役選手はほとんどいない。
自身も苦しめられたという元日本ハム投手の野球評論家、岩本勉氏は「(右手の人差し指と中指を揃えて、親指にちょんちょんとつける仕草をして)『お前、持ってるやろ?』って聞いて、このサインでイップスかどうかを確認するんです」。ネガティブな言葉を出す自体、敬遠される風潮があった。
広辞苑に「イップス」が新登場
イチローの告白で、風向きが変わりつつある。昨年、10年ぶりに改訂された広辞苑に「イップス」が新登場したように、広く認知されるようになった。
もともとはゴルフ用語。1930年前後に活躍したプロゴルファーのトミー・アーマーが思うようなパットができずに苦しんだのが始まり。「子犬がほえる」意味の英語yipが語源といわれる。ゴルフ、野球などスポーツ界から広がり、今や音楽やビジネスの世界でも使われている。
イップスは誰にでも起こる可能性があり、恥ずかしいことではない。真面目で責任感の強い人、練習を頑張りすぎる人がなりやすいといわれる。
原因も治療法も人それぞれだが、早期に同僚や指導者、専門医に打ち明け、理解と協力を得て対策を考え、復調した選手は多い。
何より、イチローほどのスーパースターでもイップスになるという事実は、壁にぶつかり乗り越えようとする人たちの背中を押すメッセージになった。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]