「終わってしまうやんか」「そら、良いものを使うよ」――若虎を刺激し続けた“岡田の言葉” 阪神の快進撃は日本一でも止まらない

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分岐点となった7月の倉敷遠征

シーズン中に低空飛行を続けていた佐藤。この若き大砲を岡田監督は簡単には見捨てなかった。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 一軍、二軍の入れ替えや選手の状態把握も鋭く、的確だった。

 昨秋キャンプからローテション入りを示唆していた期待の西純矢は開幕3登板で本来の調子とほど遠いと見ると二軍で再調整させ、トミージョン手術明けの才木浩人は4度出場選手登録を外れて休養を与えるなどコンディショニングにも配慮。才木も「1年間フルで投げ切りたかったのもありますけど、手術明けというのはすごく考えてもらった」と振り返る。

「そら、良いものを使うよ」

 監督は選手の昇降格に関して口癖のように、そう言ってきた。

 それは期待の若きスラッガー・佐藤輝明に対しても例外ではなかった。開幕から「5番・三塁」で固定される方針だったが、開幕から低空飛行を続け練習態度にも問題があったことから岡田監督は6月下旬に二軍降格を決断。昨年は2年目にして初のレギュラーシーズン全試合出場を果たしたが、3年目の今季は不振が長期化すると判断すれば、スタメンから外すことも珍しくなかった。

 9月、10月度の月間MVPに輝くなどシーズン終盤に巻き返した佐藤輝は最終的に打率.263、24本塁打、打点は自己最多の92をマークした。Vナインの一員として優勝の輪にきっちりと加わった。

 分岐点があったとすれば、7月中旬の倉敷遠征中だろう。復調の兆しを見せない佐藤輝について指揮官は、「打てそうにないなあ。俺はそう思うな」と切り出した。同じ三塁には右打ちの渡辺諒が控えており、相手投手によっての日替わり起用も予想されたが、監督は「それやったら終わってしまうやんか。別に俺はかまへんけど。俺は終わってしまうと思うよ、今度は」と首を振った。冷徹な言葉でもほのかに感じた温情。時には突き放しながらも、佐藤輝を蘇らせたのは、また岡田監督だった。

「このチームはまだまだ強くなる」。日本一の頂点に立った後も更なる伸びしろを口にしている。この1年は百戦錬磨のタクトで若い選手たちに自身の役割を認知させるとともに、グラウンドでは勝利のもと成功体験を重ねさせた。その延長戦上にあったのがリーグ優勝であり、日本一という最高の結果。このチームはまだまだ伸びる、強くなる――。そう確信する66歳のボスが虎を黄金期に先導する。





[取材・文:チャリコ遠藤]

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