史上初となる連覇のカギは? 阪神・岡田監督が抱く“不変の執念”「去年より、今年の方が、俺は勝ちたい」【コラム】

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阪神が抱える「贅沢すぎる悩み」

 岡田監督の“理想”は不変だ。就任1年目の昨年からローテーションを託す6人に加えてバックアップも含めた「7、8人」で年間のローテーションを回す構想を確立してきた。実際、村上はそのバックアップから大化けした。

 青柳、伊藤将、才木、西勇、大竹、村上の実績組が問題なければ、ローテーションの6枠は問題なく埋まる。ここに高卒2年目の有望株である門別啓人や、先発転向で猛アピール中の及川雅貴などを待機させることが可能だ。

 それでも、盤石の6人に故障や調整遅れなどが生じれば、少し不安は出てくる。現状として2軍の先発陣で1軍の先発争いに割って入るような存在は乏しく、門別などの抜てきで表向きの穴は埋まっても指揮官の「7、8人」構想に足りる人員が不足する可能性が出てくるからだ。

 とはいえ、それも他球団からすれば贅沢すぎる悩みなのかもしれない。トミージョン手術明け3年目で本格開花が期待できる才木のフル回転、青柳の復調、門別の成長……と不安を補って余りある“伸びしろ”も多々ある。先発同様に人員豊富なリリーフ陣にも3年目の変則右腕・岡留英貴という台頭もあった。岡田監督の掲げる「守りの野球」の主役を担うのは、今季も投手陣で変わりないだろう。

 その守りの野球で勝つためには攻撃での“1点”が必要になる。取るべきところで着実に加点し、ゲームの主導権を奪う。そうやって2023年はライバル球団から勝利を確実にもぎ取ってきた。

 その面で見れば、今キャンプ中に指揮官が苦言を呈した場面があった。

 2月17日の楽天との練習試合の6回の攻撃。1死一塁から栄枝裕貴、前川右京が立て続けに凡飛を打ち上げて一塁走者を進められずに終わると、試合後に岡田監督はこう漏らした。

「栄枝にしても、前川にしても、(一塁走者に)スチールのサイン出てるんよ。それをポーンと打ち上げてしまうやろ。あんなんシーズンでやったら大変やで。ヒット、ホームラン打つのがアピールやない」

 まだ実績のない若手が目の前の1打席で結果を求めるのは仕方ない。ただ、監督は“シーズンなら”という現実的な視点の欠如を嘆いた。

 一方、同じ試合の8回1死二、三塁で打席に立った小幡竜平は三塁走者をホームに生還させる渋い一ゴロを打った。昨年に開幕から1軍に同行し続けた23歳には“岡田野球”の浸透が垣間見えた。プレシーズンの段階で完全体であるはずはなく不安や改善点は、言い換えればチームが秘める進化の余地。黄金期への土台は今年のキャンプでも着実に築かれた。

 1月31日、キャンプインを前日に控えた全体ミーティングで岡田監督は10分にも及んだスピーチで選手たちに語りかけた。

「タイガースは(セ・)リーグで連覇した経験がない。今年の目標は、それ一点。143試合が終わって、最終的に一番上にいたい。去年より、今年の方が、俺は勝ちたいと思っている」

 タクトを振るう将の勝利への執念を体現するのは、グラウンドでプレーする選手たちに他ならない。レギュラー陣のさらなる進化の気配と、ニューカマー出現の息吹――。2024年も猛虎の疾走は止まらない。





[取材・文:チャリコ遠藤]

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