苦闘続きだった助っ人ケイはなぜNPBで良化? 「激情左腕」から防御率1.03の「無双左腕」になった軌跡【DeNA】

いまや強力DeNA先発投手陣の柱ともなっているケイ。(C)産経新聞社
昨年途中から“急激な良化”。左腕に一体何が?
今シーズンのDeNAは、開幕投手を努めた東克樹を筆頭に、2年ぶりに復帰したトレバー・バウアーとアンドレ・ジャクソン、そしてアンソニー・ケイと先発の4本柱がしっかりと確立されている。
その強力先発陣にあって、3勝、33奪三振、防御率1.03とトップの成績を収めているのが、ケイである。昨季も24試合に先発して136と2/3イニングを投げ、6勝(9敗)、防御率3.42と活躍。特にポストシーズンでは、2勝無敗、防御率0.55、16と1/3イニングで奪三振16と圧巻のピッチングを披露。実績は十分に残していた。
もっとも、DeNA入団当初のケイはアメリカでプレーしていた際に中継ぎのポジションを任されていた背景から、ブルペン強化で起用するプランもあった。だが、チーム事情と適性、本人の意向もあり先発に転向した。しかし、「先発としてのルーティンが確立されるまでは大変でした」と苦戦。実際、初登板からの6試合は1勝(4敗)、防御率4.24と数字を残せなかった。
しかし、徐々にペースを掴んだ5月は4試合で防御率2.00、6月は3試合で同1.00を記録。ケイは先発としてV字回復していった。
そして迎えた日本での2年目。「去年経験したことでしっかりとシーズンに入れる」と目論んだ通り、開幕からエンジン全開でマウンドを支配している。そこには経験だけではない“進化”もあった。
大原慎司チーフ投手コーチは、制球を乱すときなど苛つくケイに寄り添っていた。アンガーマネジメントも取り入れた上で「発散させるのにグローブを噛ませたり、叫びたくなったらグローブの中で隠させたりしましたね」とメンタルの安定に手を尽くした。
それが今年は違う。アンガーマネジメントは「していないですよ」という大原投手コーチは、「成績もいいので、過度のコミュニケーションは彼のストレスになる可能性もありますしね。すごくいい状態ですよ」と“大人”になった助っ人に安心感を覚える。
無論、先発投手としての“良化”には技術面も寄与している。「キャンプで1回目のブルペンで、身体をうまく使うフォームになったなと一発目に思いましたね」とメカニカルの変化を見抜いた。
「昨年は身体を横に振るような動作が入っていたのですが、今年はシンプルにホームベース方向に向かっていけています。ゾーンで勝負しようとの取り組みとマッチしてきていますね」
昨オフにケイは母国で新フォームの開発に取り組んだ。徹底してメカニックを改良したことで、無駄のない体重移動から球威あるボールを投げられるようになった。
そして、ケイは「調子がいいときは物理的に攻略することは難しいのでは」と150キロに迫るカットボールにフォーカス。大原投手コーチは「チームには独自の指標があるんですけど、それがNPBの左腕でトップクラスなんですよ。すごいクオリティです」と舌を巻いた。