今も色褪せぬ伝説の異種格闘戦 猪木vsアリの“価値”に再脚光「一見無害に見えた試合でアリは重傷を負った」

いわゆる「猪木アリ状態」でアリの膝裏にダメージを負わせ続けた猪木。(C)Getty Images
格闘技界、いやお茶の間をも震撼させた異種格闘戦だった。1976年6月に実現したモハメド・アリとアントニオ猪木のマッチアップだ。
PPVでの収入が重視される昨今の格闘技界では、もはや当たり前のように組まれるようになった「異種格闘戦」。当時のWBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンだった大スターと日本プロレス界のヒーローによる対戦は、その走りとも言える組み合わせであった。
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全世界に生中継された試合自体は単調、いや凡庸な内容に終始した。アリ側からレスリングの技やヘッドバットやチョップなど多くの禁止事項を設けられた猪木は、寝ながら相手の足を執拗に狙い続ける闘いを披露したが、めぼしい見どころはなし。戦前に「世紀の一戦」と謡われたマッチアップは、「世界的な茶番劇」とも揶揄された。
それでも時が経ち、事前交渉の舞台裏などが明るみになるにつれ、「茶番劇」とされた試合の評価は徐々に向上。いわゆる「猪木アリ状態」を続けながら、ボクシング界のカリスマに深手を負わせた猪木の攻撃スキルの高さは世界的な声価を高めるものとなった。
そんな一戦が“ボクシング大国”でふたたび脚光を浴びている。メキシコのスポーツメディア『Estadio Deportes』は「モハメド・アリとアントニオ・イノキの試合は、奇妙な展開だったが、異なる分野のアスリートによる戦いの礎となった」と強調。「アリにイノキが大幅な行動制限をされた試合は、盛り上がりに欠ける試合となった」とやはり凡庸な両雄のパフォーマンスを振り返りつつ、歴史的一戦の価値を説いた。