大橋会長が語る井上尚弥の心技体「思考法編」~人間を成長させてくれる「黄金の時間」~
才能だけではない井上尚弥
世界チャンピオンにもなれば、大勢の人の視線を集めます。ジムには一般の練習生もいますし、取材などでメディアの方たちが訪れる日だって多い。
そうなると、どうしても「見せる練習」になりがちなのです。周りを意識するあまり、中身ではなく見栄えを気にししてしまうのは、仕方がないと言えば仕方がない。
でも、井上は誰が見ていようと全力。自分が強くなるためならば、格好悪い姿を見せてもいい。本質がブレていないのです。
何度でも言いますが、井上は才能だけで「怪物」と呼ばれるボクサーになったわけではありません。同じジムの先輩である川嶋勝重や八重樫にも言えることですが、3人には謙虚さと努力をする才能があった。
ボクサーとして天賦の才があったとしても、それがなければ世界の頂点には立てないし、それを維持することもできません。私たち指導者は、そのことを選手に理解させた上で、心と体、そして技術を飛躍させるサポートをしていくことが大事なのだと思っています。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
大橋 秀行 (おおはし・ひでゆき)
1965年生まれ、神奈川県横浜市出身。
現役時代はヨネクラボクシングジム所属。日本ジュニアフライ級(現・ライトフライ級)、WBC世界ミニマム級ならびにWBA世界同級王座を獲得。1993年に現役を引退、大橋ボクシングジムを設立し会長を務め、八重樫東、井上尚弥等の世界チャンピオンを輩出。
井上 尚弥 (いのうえ・なおや)
1993年4月10日、神奈川県座間市出身。
今もコンビを組む父・真吾氏の下、小学1年でボクシングを始める。相模原青陵高校時代に7冠を達成し、2012年に大橋ジムからプロ入り。戦績18戦全勝(16KO)。15年に結婚した高校時代の同級生との間に17年10月、長男が誕生した。