セ・パ交流戦総括…得したチーム、損したチームは?
日本生命セ・パ交流戦は今季も熱戦に次ぐ熱戦でした。1試合の平均観客数は昨季から3・1%増の3万1110人。過去最多を更新しました。DeNAが「ウィング席」を増設した影響も当然あるのでしょうが、普段は見られないマッチアップをナマで味わう醍醐味が野球ファンのみならず、多くの人々に浸透した結果でしょう。
143試合を争うペナントレースの中で、交流戦は18試合。「たかが交流戦、されど交流戦」です。この時期に戦力が整い、勝ち方を確立させたチームがリーグ戦再開後、そのまま優位に進めるケースが目立っています。一方で「まだ70試合も残っている」というのも厳然たる事実。交流戦で得したチーム、損したチームをあらためて総括してみましょう。
【得したチーム】
ソフトバンク・・・終わってみたら勝っている「常勝軍団の凄味」
最終戦の「勝った方が優勝」という巨人との大一番を制して、ソフトバンクが2年ぶり8度目(最高勝率含む)を成し遂げました。交流戦前にはリーグ3位でしたが、終わってみれば堂々の首位浮上です。
いくら「交流戦の鬼」であるホークスといえども、今季は苦戦するのではないか…。そんな下馬評もありました。投手では東浜、サファテ、森。打者では柳田、今宮、中村晃をケガで欠き、万全のチーム編成ではなかったからです。
しかし、そんなピンチをチャンスに変えてしまうのがホークスの凄味。交流戦のチーム打率が2割3分3厘と苦境にあえぎながら、本塁打はダントツの32本。交流戦2位のオリックスが8本ですから、実に4倍の破壊力です。
MVPに選出されたのは元気印の松田。チームトップの打率3割4分8厘、本塁打7本、14打点でナインを鼓舞。精神的支柱として牽引しました。ベテランがしっかりと軸を担うからこそ、日替わりのヒーローが生まれ、チームが活性化する。セの各チームに「ソフトバンクはやっぱ、えげつない」と強烈な印象を植え付けたのも、日本シリーズに向けての好材料です。
オリックス・・・ドラ7の中川が首位打者でブレイク!
交流戦に入る前は首位と8・5ゲーム差をつけられ、ジリ貧の最下位に沈んでいましたが、何と交流戦2位の大健闘。11勝6敗1分けで貯金5を稼ぎました。それでもリーグ最下位なのは、パ・リーグ全チームがいずれも交流戦をそれほど苦手にしていないため、格差が縮まらないためです。
明るい材料は投打にイキのいい若手が出てきたことでしょう。中でも特筆すべきは東洋大出身のドラフト7位ルーキー・中川です。下位指名から堂々の「下剋上」。打率3割8分6厘で、交流戦の新人では史上初の首位打者に輝きました。
東洋大では投手の甲斐野(ソフトバンク1位)、上茶谷(DeNA1位)の陰に隠れ、メディアからは「最後のPL戦士」という取り上げられ方をされることが多かったですが、非凡な打撃を披露。定位置をつかみ、野球ファンにその名をとどろかせました。
巨人・・・恒例の「交流戦で失速」ジンクスを打破 桜井はもはやエース格!?
巨人はソフトバンクとの最終決戦に敗れ優勝を逃し、3位に甘んじました。とはいえ、セの好敵手が失速する中で11勝7敗は好成績。パの各球団に辛酸をなめさせられたここ数年を思えば、5年ぶりの勝ち越しは上出来といえるでしょう。
交流戦前は首位・広島と4・5差がついており、「カープアレルギー」に苛まれたG党からは「結局、今年も厳しいか…」と悲観的な声も聞こえていましたが、広島の失速にも助けられ、セ界の首位に躍り出ました。
エース・菅野が不調。しかも開幕から絶好調だったキャプテン・坂本がスランプ…。それでも勝ちまくったことに意義があります。中でもうれしい誤算は15年ドラフト1位・桜井の「開花」に尽きます。
交流戦では先発ローテを任されると、3試合に登板し、2勝0敗、防御率1・83をマーク。強気に内角を突く投球は見る者に爽快感をもたらします。交流戦での被打率1割7分4厘は12球団1位の中日・大野へと1厘差に迫る2位。投球回を上回る三振を奪うなど、今ではG党から「エース格の存在感がある」と信頼されるほどです。
問題はこれを再開したリーグ戦で継続できるかどうか。しかし、桜井にはそれほど期待していなかった分、巨人ファンの「得した」イメージは高いのも事実といえます。