なぜDeNAの助っ人投手たちは“良化”するのか? 背景にあった球団の叡智が凝縮された“独自メソッド”「失敗する未来が、ちょっとわかる」

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小杉コーチ(中央)を中心として築いてきたDeNAのメソッドによってウィック(左)やジャクソン(右)も大きく改善された。写真:萩原孝弘

「潰せる課題を、まず潰す」作業とは

 シーズンに入ってから、揃って日本野球への適応を見せた新外国人トリオ。思えば2年前、鮮烈デビューを果たしながら、その後に滅多打ちにあったトレバー・バウアーもV字回復していた。

 助っ人投手が良化していくカギは、球団を挙げて取り組んでいる“メソッド”だ。その取り組みの一端を小杉陽太一軍ピッチングコーチが明かしてくれた。

「彼らにもアメリカでやってきたやり方があるから、1回それでやってみさせます。1回、自分でそれを体験しないと、そこに目を向けない選手もいる。すぐ色々トライしてくれる選手もいますけど、その辺は性格も見極めながらですね」

 まずは個々のキャラクターに合わせ、プライドを尊重しつつ見守る。それでも「大体、失敗する未来が、ちょっとわかるんです」という小杉コーチはこう続ける。

「ウチにはいい設備もあるし、動作解析もバイオメカニストの人もいる。さらにデータサイエンティストの人も仮説検証してくれるので、大体予測したものって、やっぱりその通りに起こるんですよ」

 蓄積されたデータを元に“ネガティブな未来”は予想される。それを織り込んだうえで実際に失敗した事象を検証し、相互の理解を深めた後に「潰せる課題を、まず潰す」作業に移行する。

 一例として、小杉コーチはジャクソンとの取り組みを明かす。

「ジャクソンも最初は苦しんだのですが、『去年もバウアーにこういう資料を見せて、こういう風に日本の野球にアジャストしてったんだよ』って言ったら、すごく前向きにトライしてくれた」

 細部も徹底的に分析する。そんな選手とのやり取りの中で「覚えた方がいい変化球や、スライダーをもう少しこの位置にまで持っていけると、かなり変わってくるよねとか、パフォーマンスの部分もなんとなくわかる」という。小杉コーチは、「悪くなってるポイントも大体わかる。そこからこれ潰せばここの指標はもっと良くなると言う感じでやっています」と課題の解消とブラッシュアップに繋げている。

 今もブラッシュアップの日々は続いている。ウィックに対して小杉コーチは、さらなる成長のために現在進行系で取り組みを続けている。

「基本的にリリーバーはフォークボールとかチェンジアップとか、空振りを取れるボールは絶対にマスト。ウィックには去年から、『フォークを覚えたら絶対君のキャリア変わる。格段に変わるよ』って言ってます。そうすると、彼もニヤッとして喜んでくれるんです。それからハイスピードカメラで見たりとか、色々試行錯誤して、今やっとこう、フォークがすごくいい質のボールになってきてるんですよ。あとは実際に試していく段階ですね」

 最新機器を用いて弾き出した数値や可視化されたデータに、“異国からの挑戦者”に対するリスペクトをもって築き上げる信頼の形。DeNAの助っ人投手たちの成功には、表舞台には見えない球団の叡智が凝縮されていた。

[取材・文/萩原孝弘]

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